研究テーマについて
本年度の研究について
《宮崎県大会主題》
「家族や地域の人々と関わり、生活をよりよくしようと実践する子どもの育成」
主題設定の理由
 わたしたちの社会は、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新、急激な少子高齢化、人工知能(AI)の飛躍的な進化等が進み、急速に変化している。また、家族・家庭生活の多様化や社会環境の変化は、家庭や地域の在り方にも影響を及ぼし、家庭や地域の教育機能の低下、人間関係の希薄化等の問題を生んでいる。 
 これからの予測困難な社会を生き抜く子どもたちは、自分を取り巻く生活の中から問題を見出し、主体的に解決していく力を身に付けていくことが大切である。そして、家族や地域の人々と協力して課題を解決しようとする態度を育てていくことが、これからの社会をたくましく生き抜く力となると考える。
 新学習指導要領において、急激な社会の変化に対応できる資質・能力の育成を目指すことが明示された。また、このような資質・能力を育むために、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を進める必要があることが示されている。「深い学び」とは、「生活の営みに係る見方・考え方」を働かせながら、課題の解決に向けて自分なりに考え、表現するなどして、「生活をよりよくしようと工夫する資質・能力」を身に付ける学びである。
 これまで県では、「学びの中からつながりを見出し、将来を見通す実践力を育む家庭科教育」を目指し、研究を進めてきた。基礎的・基本的な知識及び技能の定着を図る工夫、家庭や生活に生きる実践力を育てるための工夫、実践意欲を高めるための評価の工夫等を行い、日常生活に必要な知識及び技能の定着や豊かな生活を創り出す子どもの育成について一定の成果をあげてきた。一方、家族の一員としての自覚や、自ら進んで課題を見付けそれを解決していく力、また、家庭科学習での学びを家庭生活での実践へつなげることについては、まだ十分とは言えないという課題が残った。
 以上のことから、子どもが生活の営みを見つめ、問題を見出して解決し、習得した知識及び技能を家庭や地域の中で活用する学習を充実させることで、家庭科の目指す資質・能力を育むことができると考え、本主題「家族や地域の人々と関わり、生活をよりよくしようと実践する子どもの育成」を設定した。
2宮崎県研究主題のとらえ方
(1) 「家族や地域の人々と関わり」とは
 新学習指導要領において、家庭科学習の課題は、「家族の一員として協力することへの関心が低いこと、家族や地域の人々と関わること、家庭での実践や社会に参画することが十分でないこと」であると指摘された。また、それは、本県の子どもたちの課題でもある。
 子どもたちが家庭科学習を通して習得した知識及び技能を活用して、家族とともに家庭の仕事を行うことで、家族に喜んでもらったり、役立つ喜びを味わったりする。できるようになった自分の成長を自覚したりする。そうすることで、家族の一員として家庭の仕事に協力したり家庭生活を大切にしたりする態度が育成されると考える。また、低学年の児童や高齢者等、異なる世代の人との関わりを工夫することで、家庭での実践や社会に参画しようとする態度が育成されると考える。
(2)「生活をよりよくしようと実践する」とは
 主体的・対話的で深い学びを実現させることで、家庭科の目指す資質・能力が育まれていく。そのためには、「見方・考え方」を働かせることが鍵となる。「見方・考え方」を習得・活用・探究という学びの過程の中で働かせることで、より質の高い深い学びにつなげることができるのである。
 「生活をよりよくする」とは、今の自分の生活を見つめ、自ら課題を発見し、「生活の営みに係る見方・考え方」を働かせながらよりよく解決しようとすることである。また、「実践する」とは、解決する過程で身に付けた力を家庭や地域で活用し、実践することである。このような学びを追究し、資質・能力が育成できるようにしたい。
3本研究でめざす子ども像
○ 日常生活で活用できる知識及び技能を身に付けている子ども(知識・技能)
○  日常生活の課題について解決方法を考え、分かりやすく表現し、よりよい方法を判断できる子ども(思考力・判断力・表現力)
○  家族や地域の人々と関わりながら生活をよりよくしようと実践する子ども(学びに向かう力、人間性等)
4 研究の内容
(1) 知識・技能の習得を図るための教育課程の工夫
○ 小中を見通した指導計画の工夫
○ カリキュラムマネジメント
(2) 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善
○ 問題解決的な学習指導過程の工夫
○ 実践的・体験的な活動の工夫
(3) 実践につながる家庭や地域との連携
○ 学びを家庭や地域で活用するための工夫
○ 家庭や地域とのつながりをもつための工夫
5 研究の視点
 視点① 知識・技能の習得を図るための教育課程の工夫
○ 小中を見通した指導計画の工夫
※ 小学校と中学校の5 年間の年間指導計画の関連を図り、系統的に知識・技能の習得を図るようにする。
○ カリキュラムマネジメント
※ 題材構成、授業づくりにおいて、「A 家族・家庭生活」「B 衣食住の生活」「C消費生活・環境」を関連させ、効果的な学習が展開できるようにする

※ 家庭と地域との関連、学校行事や総合的な学習の時間、他教科等との関連を図りながら学習活動を設定する。そうすることで、より効果的に知識・技能を身に付けさせ、家庭や地域での活用や学びの価値、充実感や達成感を味わわせることにつなげられるようにする。
 視点②「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善
○ 問題解決的な学習指導過程の工夫
※ 生活の問題発見、課題の設定解決に向けての情報収集、実践的・体験的な活動を通した知識・技能の習得家庭や地域の実態に合わせ、身に付けた知識・技能の活用、実践といった問題解決的な学習指導を充実させることで、「主体的・対話的で深い学び」を実現し、授業改善を図るようにする。
※ 学習指導過程において、「生活の営みに係る見方・考え方」のどの
視点をどこで働かせるのかを明示する。
※ 問題解決的な学習指導過程の学習段階に応じて、評価の観点と評価内容、評価方法を設定する。
○ 実践的・体験的な活動の工夫
※ 新設された内容に取り組む。
※ 学びを深めるための対話的な話合い活動、ICTの活用等に取り組めるようにする。
 視点③ 実践につながる家庭や地域との連携
○ 学びを家庭や地域で活用するための工夫
※ 導入において、ゴールの姿を明確にし、「家庭や地域をよりよくしていきたい」という思いをもちながら学習に取り組めるようにする。
※ 身に付けた知識・技
能を活用して、家庭や地域に合わせてどのように実践するかを検討したり、実践後の振り返りを行ったりして、評価・改善できるようにする。
※ 家族や地域の人々から評価してもらうことで、実践後の充実感、達成感が味わえるようにする。
○ 家庭や地域とのつながりをもつための
工夫
※ 家庭や地域でのインタビュー、地域人材の活用等を工夫し、家庭や地域との連携を図るようにする。