日誌

第62回入学式

「式辞」

 満開の桜もいつしか新緑となり、爽やかな春風に生命の息吹を感じるこの佳き日に、第62回入学式を挙行できますことは、私たち教職員一同、喜びに堪えないところであり厚くお礼申し上げます。
 ただ今、入学を許可されました104名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
 過去2年、新型コロナウイルスにより世界が一変し、私たちの生活様式も大きく変わりしました。しかし、昨年度は感染防止対策を図りながら、ほぼ全ての学校行事を実施してまいりました。コロナ終息にはある程度時間がかかるかもしれませんが、本年度も感染防止対策を徹底しながら、皆さんの充実した学校生活をしっかりとサポートしていきたいと考えております。
 さて、皆さんの多くは専門の知識を身につけて企業に就職したり、大学などの上級学校に進学するために、本校を志したことだと思います。産業系高等学校では就職試験を意識した学習に取り組むため、誰もが資格取得や初めての実習に不安を抱くものです。もちろん、就職試験に対応できる能力を身につけることは大切ですが、皆さんが身につけるべき能力は問題を解く力だけではありません。変化の著しい現代社会は正解のない課題が山積しています。その解決には、様々な情報を集積し比較し、他者と議論を交わすことが必要となります。4月1日に18歳成人となる改正民法が施行され、現代を生き抜く資質と能力を身につけていかなければならなくなりました。
 私たち教職員が育成すべき資質・能力は、3つの柱で成り立っています。1つめは、「知識・技能」です。工業人としての基礎的な学力に加え、専門的な技能を身につける必要があります。2つめは、「思考力・判断力・表現力」です。知識や技能を組み合わせることで、適切な思考や判断が可能となります。3つめは、「学びに向かう力・人間性」です。人がモノを作るのではなく、モノを作るのは人なのです。つまり、モノにはその人の人間性が表れてきます。お客様の立場に立って製品を作ったり、お客様の喜ぶ姿を想像しながら作ることで、より素晴らしいモノが出来上がると私は確信しております。私たち教職員も企業が採用してよかったと思える学校づくり・人づくりに努めてまいります。
 新入生の皆さんには、この資質・能力を身につけるため、学業・部活動・学校行事に積極的に取り組んで欲しいと思います。もちろん、複数の目標を持つと大変忙しくなりますが、個人には受け入れる量に差がありますので、他人と比較せずに自分のペースで取り組むとよいでしょう。調子が良いときは喜びすぎず、調子が悪いときは落ち込みすぎず、「ゆらがずとらわれない」ことが大切です。この状態をスポーツ界ではフロー状態と言います。
 昨年、パ・リーグを制したオリックスバファローズの山本由伸投手は、皆さんも知っているように日本球界を代表するエースピッチャーです。彼は、どんなときもイライラはしないそうです。「うまくいかない自分にイライラするのは、それをやっていない自分が悪いだけ。」と言っています。山本投手のパフォーマンスを支える要因は、成功に向けた周到な準備と味方がエラーしても「ゆらがない心」だということです。 皆さんも、物事に一喜一憂せず、自分の果たすべき役割をしっかりと果たせる生徒になって欲しいと思います。そして、努力を惜しまず、大人に感動を与えられる生徒になって欲しいと願っています。
 最後になりましたが、本日ご臨席いただいております保護者の皆様におかれましては、お子様のご入学、誠におめでとうございます。また、コロナ禍の中、規模を縮小した形での入学式となりましたが、皆様の御理解と御協力に心より感謝申し上げます。ここにいる生徒たちは、地元宮崎を支える宝です。私たち教職員は、104名の新入生を責任を持って育ててまいります。そして、新入生一人ひとりの進路実現に向け、3年後に、成長した姿で社会に送り出すことをお約束し、式辞といたします。「日向を動かす人となれ」