大会報告

演劇専門部より

文化を育む土壌


                                  専門部会長 段 正一郎(延岡高等学校 校長)

 昔話を好むのは、年を取った証拠ですが、実際年を取ったのだから、もういいのです。昔話をします。
 私が教員になったのは昭和54年で、国語の教員だという理由だけで、有無を言わさず演劇部の顧問にさせられました。当時の演劇部の顧問会は、酒飲みの巣窟でした。泊まりがけの演劇講習会やコンクールの懇親会では、酒癖の悪い顧問が東京から呼んだ高名な審査員にからんだり、深夜までお互いの劇を批判しあったりと、大荒れになるのが常でした。
 そんな飲み会を嫌がる人もいましたが、でも私は、いい年をした大人の先輩教員が、いつまでも万年書生のような議論をしている光景は嫌いではありませんでした。また、そんな酒飲みは、毎年渾身のお芝居を持ってきました。最近は、飲み会に出る人も少なくなりましたし、飲んでもスマートな酔い方をする人ばかりになりました。
 文化の反対概念は、利便性とか効率だと私は考えています。荘子でしたか、混沌にお礼をしようとして穴を開けていったら、混沌が死んでしまったという話がありましたが、私たちは文化を育てようと唱えながら、一方では文化を殺そうとしているのかもしれません。演劇を始め、部員数の減少を生徒減に帰する理屈があるとするなら、それは違うと思います。学校も含めて、私たちの社会のどこかに、文化の育成を阻む要素があるのだと、私は思っています。
 さて、今年も佐土原高校が5年連続で県代表になりました。ここ数年の中では、最もいい作品だったと私は思います。佐土原高校の健闘を称えつつ、演劇専門部の隆盛のためには、どこかに佐土原高校を凌ぐ作品を作って欲しいという思いもあります。