PRINCIPAL'S OFFICE

【校長室】私事

初めての手術入院顛末

  私事で恐縮だが、先日心臓のアブレーション手術を受けた。

不整脈と診断されたのは今からおよそ7年前。学校の定期健診で見つかった。どういう病気かある程度はわかっていたものの、若気の至り(年齢的に決して若くはなかったが…)でそれほど気に留めず、専門医を受診することはなかった。

ある年、教え子の看護師と話す機会があった時、何の気なしに軽い気持ちでその旨話したところ、思いがけず厳しく注意を受け強く受診を勧められた。それでも仕事が忙しいことを言い訳に病院に行くことはなかった。

そんなある日、胸の激痛と呼吸困難に襲われた私は、近くの大学病院に駆け込むことになる。応急処置として点滴を受けながら、再度強く専門医への受診を勧められた。しぶしぶ最寄りの病院で専門医による検査・診察を受けたところ、結果は「病気のオンパレード」。もともと体力に自信があったため、高を括って放置していたら、とんだことになっていたのだった。担当医師曰く、「(治療しなければならないところはたくさんあるが)特に心臓は早急に手術を受けたほうがよい」とのこと。

にもかかわらず、私はまたしても仕事を言い訳に(ちょうどその頃管理職試験を受けていた)、手術ではなく、服薬で悪化を防ぐ治療方法を選択したのだった。それからも、幾度となく手術を勧められたが頑なに断り続けていた。その間薬の種類はどんどん増えていった。

そして昨年、校長として高千穂中学校に転勤となり、宮崎市内のかかりつけ医から紹介状をもらい、通院に便利の良い町立病院で薬を処方してもらうようになった。高千穂での昨年秋の検査結果で、再度手術を勧められ、初めて手術を受けることを前向きに考えるようになった。そんな矢先、深夜に体調が悪くなり、自分で車を運転して病院へ急行。そこでようやく迷いが吹き飛び、手術を受けようと決心した。

昨年末、紹介状を携え宮崎市内に新しく移転した総合病院へ行き、改めて病状を把握するための検査を受けた。後日診断結果を聞くために診察室へ、目の前に座った医師から出た言葉は「私を覚えていますか?」。

なんとなんと、私の担当となった主治医は他でもない、7年前「病気のオンパレード」と私に宣告した医師だったのだ。これも何かの縁かな、とのんびり構えていたが、ここまで手術を受けず、服薬でお茶を濁していた私と検査結果に対して医師からは厳しいお叱りをいただくことになり、私はひたすら平身低頭であった。

さて手術を受けるには入院せねばならない。受けられる日程は早くて4月とのこと。年度初めの準備や入学式等の行事との兼ね合いで、4月第3週に決まった。

医療の進歩は素晴らしい。心臓手術が3泊4日で済んでしまうのだ。

それにしても、手術日前日に入院してからというもの、病院スタッフの“報連相”と連携は見事というほかなかった。ついスタッフの動きを仕事人の目線で見てしまうのは職業病だろうか。「何かあったらナースコールで呼んでくださいね」という言葉に甘えてあれこれ言う私のわがままを真剣に聞いてくださり、判断困難な場合はその都度必ずドクターに確認し指示を仰ぐ徹底ぶりにはただただ感心するばかりである。

命を預かる職場、責任感と緊張感の中、どんな場面でも笑顔を絶やさず、懇切丁寧に対応してくれる姿はまさに白衣の天使(最近は白じゃなくてカラフルだけれど、それにこの言い回しも古いなあ)。手術(私が処置を受けたのは「検査室」だった)に向かう途中、そして手術台の上でも、まさに俎板の鯉となってドキドキしている私にかけてくれる「がんばりましょう」の明るい声や、リラックスしたスタッフの笑い声(私を安心させるためであろうが)にどれだけほっとしたことか。

術後のケアについても、1時間ごとに体温や血圧、傷口の確認に来られて、その度に「何度もすみません」と言われる。いやいやそれはこちらのセリフですって!4日間携わってくださったスタッフの皆さんには感謝しかない。 

今回の入院では週休日を含め9日間お休みをいただいたが、その間の校長職務は全て教頭先生に代行していただいた。どの学校にも“教頭”という素晴らしい参謀が配属されているが、高千穂中学校にもすこぶる有能な教頭がいる。留守を任せても安心であるということも、手術を決断する強い後押しとなった。教頭先生にも感謝である。 

初めて入院してみて、改めて学んだことが4つある。

一つめは、報連相の徹底。学校現場で常に口癖のように言っている「連携と報連相」はまだまだ密にする必要があるし、できるのだと感じた。

二つめは、入院中に読んだ刊行物『中学校 №847』29ページ下段中ほどに書かれている言葉である。「…人の力を借りることを学んだ。…これを他力と呼んで、他力を集められるようになったら、それは幸せなことだ…」

教頭をはじめとした先生方、保護者の皆さま、公民館長さんをはじめとした地域の方々…、他力なしでは学校経営は成り立たないではないか。

三つめは、周囲の方々への感謝を日頃から忘れないこと。そして、感謝の気持ちをきちんと言葉で伝えること。今回多くの方々に支えられ、その温かさやありがたさをベッドの上で痛感した。

最後は、健康のありがたさ。

『自分を大切にするひとに』と生徒に説いておきながら、私は私を大切にできていなかった。

「なんでこんなになるまで放っておいたんですか」と叱られて、私は主治医に謝ったけれど、本当に謝らなければいけなかったのは、私自身にだった。不規則なリズムを刻みながらも私を仕事に向かわせてくれた心臓に、身体に、よくここまでがんばってくれたと、今ここにこうしていることが奇跡なのかもしれないと。

助けていただいた命を大切にし、これからの校長職務を全うし、生徒にとってより安心安全な学校経営に取り組んでいきたい。