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心の声

【校長室】第79回入学式校長式辞

式辞

 柔らかな春の光が降り注ぐこの佳き日に、高千穂町長 甲斐宗之様、高千穂町教育委員会教育長 戸敷二郎様をはじめ、多数の御来賓の皆さまの御臨席を賜り、高千穂町立高千穂中学校第79回入学式を盛大に挙行できますこと、心より感謝申し上げます。

 75名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。保護者の皆さま、本日は、お子様のご入学、誠におめでとうございます。わたくしたち教職員・在校生一同、皆さんの入学を心待ちにしておりました。

 新入生の皆さん、昨日の夜は眠れましたか?今、どのような気持ちですか?緊張、不安、期待など様々な思いで、今、入学式に臨んでいると思います。両隣に座っている人と顔を合わせて見てください。それぞれに思いの違いはあっても、みんな同じ気持ちです。これから、楽しいこと、うれしいことがあったときは分かち合い、辛いことやきついことがあったら、励ましあい、支えあえる仲間であってほしいと思います。

 さて、本年度より高千穂町の中学校は高千穂中学校の1校となりました。ここ約20年間で5校から1校になりました。私たちが常に考えなければならないことは、地域の方々の願い、思いです。私たちは地域の方々に支えられています。中学生がいるいないにかかわらず全世帯から後援会費として支援いただいています。登下校の時には横断歩道等で見守りをしていただいています。総合的な学習の時間をはじめ、学校の授業等においてご指導、ご講話いただいています。

 これらのことは決して当たり前のことではありません。物資両面から支援いただいている地域の方々に私たちができることを今まで以上に考えていかなければならない一年にしなければなりません。みんなで考え、取り組み、そして、高千穂中学校が地域の方々を元気づけられるようにがんばっていきましょう。

 新入生の皆さんに向けて、一つお話したいことがあります。在校生の皆さんには始業式と同じ話になりますが復習のつもりで聞いてください。

 新入生の皆さんは、物理学者のアルベルト・アインシュタインを知っていますか。一般相対性理論などを発表し、ノーベル賞も受賞した天才物理学者です。そのアインシュタインの言葉に「大事なのは問いかけをやめないことだ。好奇心には存在意義がある」という名言があります。伝えたいのは、皆さんに「問い」をもって学んでほしいということです。

 勉強面において、先生から聞いたことを覚える、問題を解くだけでなく、なぜそうなるのか、本当にそうなのかを自分で考え、友達や先生に聞き、友達と一緒に考え、自分の考えを述べてください。総合的な学習の時間に講話を聞いたり、施設見学に行ったりしますが、なぜ?どうして?と、問いを持ちながら話を聞いてください。そのことが、学ぶ楽しさにつながり、学ぶ意欲になり、結果、いろいろな力が身に付きます。

 勉強だけのことではありません。部活においても、早いボールを投げたいとか、狙ったところに打ちたい、もっと上手に演奏できるようにしたいなど、うまくいかないところがたくさんあると思います。そんな時に、なぜ、うまくできない、上手にできている人はなぜできる?顧問の先生からもらったアドバイスはなぜそうなの?など、できるようになるためには、顧問の先生や仲間からのアドバイスを言われたとおりするだけでなく、なぜそうするのかを理解することで、本物の「できた!」につながっていきます。

 さらには人間関係もです。友達とぶつかることがあったとき、「もう、あの人は嫌い!」と思うのではなく、「なぜ、あんなことを言ってきたんだろう」、「どうしたらわかってもらえるだろう」と「問い」をもってください。相手の気持ちを考えることは大切なことであり、解決の糸口になるかもしれません。

 では、なぜ、「問い」をもつことをしてほしいのか?先ほど話した「いろいろな力が身に付く」とはどんな力なのか?これは、在校生も含めた皆さんへの問いです。これから、いろいろな「問い」や「疑問」を日々見つけてください。

 保護者の皆さま、わたくしたち教職員は、お子様の限りない可能性を大切にはぐくみながら、保護者の皆さまとしっかり連携し、地域の方々とともに、お子様の力を最大限に伸ばすよう、精一杯努力してまいります。何卒、皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

 結びに、本校の教育に多大な御支援・御協力をいただいております御来賓の皆さまに、感謝申し上げますとともに、新入生75名の健やかな成長と活躍を願い、式辞といたします。

【校長室】令和7年度第1学期始業式 校長挨拶

今年度、南部教育事務所より赴任してまいりました西田浩司と申します。新年度のスタートにあたって、始業式にて以下の話を生徒にしました。

    おはようございます。今日から新年度が始まりました。

 今年度の高千穂中学校は、上野中学校から来た皆さんと一緒に、学校生活を送ることになり、新たな伝統を築いていくことになります。上野中学校から来た皆さん、いろいろと不安があるかと思いますが、新たなところでスタートすることに緊張するのはみんな一緒です。私も、この高千穂中に今回赴任してきて、そして初めての校長です。ドキドキしています。務まるかなあ、大丈夫かなあととても不安です。そんな時に助けてくれるのは周りの先生方です。4月1日からの4日間、多くの先生方からいろいろと学校のことを教えてもらい、先ほど新任式で紹介された先生方も以前からおられる先生方から教えてもらい、一緒に新学期の準備を進めてきて、少しずつ不安が取れてきているのではないかと思います。昨年度から高千穂中学校に在籍している皆さん、まずは、上野中学校から来た仲間が、緊張した中で今日を迎えていることを一緒に感じて、そしていろいろなことを教えてあげて、一緒に学び、遊んでください。

 新年度に向けて、一つだけお話しします。それは、皆さんに「問い」をもって学んでほしいということです。

 授業において、先生から聞いたことを知識にしていく、問題を解くだけでなく、なぜそうなるのか、本当にそうなのかを自分で、もしくは友達や先生に聞き、友達と一緒に考え、自分の考えを述べてください。総合的な学習の時間で講話を聞いたり、職場体験する中で、なぜそうなのか、その視点をもって、話を聞いたり、体験したりしてください。そうすることで、学ぶことの意欲につながり、学ぶ楽しさにつながり、その結果が学力の向上にもつながってくるはずです。勉強だけのことではありません。

 部活においても、ボールを早く投げたいとか、狙ったところに打ちたいとか、うまくいかないところがたくさんあると思います。そんな時に、なぜ、うまくできない、上手にできている人はなぜできる?顧問の先生からもらったアドバイスはなぜそうなの?など、できるようになるためには、顧問の先生や仲間からのアドバイスを言われたとおりするだけでなく、なぜそうするのかを理解することで、本物の「できた!」につながっていきます。

 さらには人間関係もです。友達とぶつかることがあったとき、「もう、あの人は嫌い!」と思うのではなく、「なぜ、あんなことを言ってきたんだろう」「どうしたらわかってもらえるだろう」と「問い」をもってください。相手の気持ちを考えることは大切なことであり、解決の糸口になるかもしれません。

 ここで皆さんに質問です。高千穂中学校の校内にはなぜ、ミラーがありますか?いつくありますか?なぜ、そこについていますか?当たり前と思っていることも、よくよく考えてみると疑問に思うことが生活の中にたくさんあります。

 物理学者のアルベルト・アインシュタインの言葉に「大事なのは問いかけをやめないことだ。好奇心には存在意義がある」という名言があります。いろんな?(はてな)をこれから、日々見つけてください。

【校長室】惜別

校長職が終わろうとしている。およそ2年前、本校に赴任したときの衝撃は今でも忘れない。4月早々、物珍しそうに自分を見つめる生徒が、元気よく挨拶する光景はどの学校でもよくある。しかし、玄関の床に膝をつけ、タイルのくぼみの跡が膝に残るほど、せっせと雑巾をかける生徒はあまり見たことがなかった。しかもこういう生徒を校内の至る所で見かけたのである。先生方のご指導に感謝すると同時に、その指導をしっかりと受け止め、行動に移す生徒たちが輝いて見えた。これほどの学校があるとは思いもしなかった。それから一緒に学校生活を送るほど、生徒の良さがさらににじみ出てきた。男女とも仲良く、グループ分けや班編成で性差を考慮する必要もない。地域の方々から「高千穂の宝」として、大切に育てられ、生徒は健やかに育っている。僻地校の小規模校ならまだしも、各学年70~80名の全校生徒240名の在籍数の学校において、これほど落ち着いている学校がどれほど存在するであろうか。それほどこの2年間が充実していた。

定期異動が新聞で報道されると、これまでお世話になった方や諸先輩の先生方からたくさんのお電話をいただいた。午前4時20分のメールは数校前まで赴任していた学校のPTA会長からであった。「引っ越し手伝い行きますよ」と。

民間企業の経営資源は、人、物、金、情報、、時間、知的財産と言われる。様々な教育課題を抱える学校の現場では、教師によってその教育効果はいくらでも変動する。経営資源の筆頭にあげられる「人」次第であるということである。だから私は、人材育成により力を注いできた(つもりである)。そういう意味で人と接してきた。

現場一筋で生きていこうと考えていた私は当然、それほど人脈があるわけでもないが、ある出来事がきっかけで管理職になった。たった5年であったが、その間多くの仲間が管理職になり、第一線で活躍している。今年度本校から移動する先生の新たな赴任校には、その仲間がいる学校もある。また、私が今度勤める学校には私の初任校で、27年前まで3年間勤めた。当時の教え子は40歳半ばとなり、中学生の子供がいる年代であり、さっそく、「娘の担任をしてほしい」との連絡があった。縁を感じる。これまで教員としてやって生きたことに間違いはないと確信できる。人生の伏線回収が始まったと感じる。

次の仕事内容は、初任者の指導を担当する拠点校指導教員である。計画書や報告書は何度も見ており、決裁もしてきた。しかし、実際にその担当ともなり、手引き書を見てみると勉強をし直す部分もたくさんある。一から勉強のやり直しである。まさに「人生常に60点、学びなくして成長あらず、志叶うまで挑戦」である。

一昔前までは60歳で、定年退職。今では役職定年も選択できる。私を必要とする学校がある以上、もう少し頑張ってみようと思う。高千穂の皆さんお世話になりました。

【校長室】第78回卒業式校長式辞

式辞

厳しい冬の寒さが続く中にも、確かな春の息吹が感じられる今日の佳き日、栄えある卒業証書を授与いたしました67名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日の日を待ち望んでおられた保護者やご家族の皆様におかれましては、慈しみ、大切に育ててこられたお子様の、立派に成長された姿に感慨もひとしおのことと拝察いたします。義務教育9年間もの長きにわたり、お子様の修学を支え、励ましてこられたことに、深く敬意を表しますとともに、本校教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。

また、公私ともにご多用の中、高千穂副町長 藤本昭人(ふじもとあきと)様、高千穂町教育委員会 教育委員佐藤幸男(さとうゆきお)様をはじめ、本校ゆかりのご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに第78回卒業式を盛大に挙行できますことは、この上ない喜びであります。卒業生の門出に花を添え、お祝いいただき、高いところからではございますが、衷心より感謝申し上げます。

卒業生の皆さんは、これまで学習や学校行事、生徒会活動、部活動等に熱心に取り組んできました。3名の3年生が力走し、見事優勝を果たした宮崎県中学校新人女子駅伝。宮崎県ワールドアスリート2名が所属する女子バレー部は、宮崎県と鹿児島県の対抗戦で、5位に入賞する活躍をみせました。体育大会では、各団長がオリジナルに富んだパフォーマンスを披露し、紅葉祭では、合唱で3年生らしい美しいハーモニーを聴かせてくれました。高千穂町の観光名所を紹介したオリジナルの学年劇では観客を魅了しました。高千穂プロジェクトでは、「高千穂に貢献しよう」というテーマで、高千穂町が抱える課題を一つでも解決しようと多くのアイデアを発表しました。様々な場面における皆さんの大活躍に、無限の可能性を何度も感じました。もちろん、必ずしも順風満帆な日ばかりではなかったと思います。時には悩み、時には苦しみながらも、くじけることなく過ごしてきた3年間のさまざまな思い出は、皆さんの心にしっかりと刻まれていることでしょう。

そういう皆さんは、私が校長として送り出す最後の卒業生であります。私はこの1年、教師生活30年を振り返りながら、皆さんと共に学校生活を送ってきましたが、皆さんの活躍や成長は何よりの楽しみでありました。最高学年として、多くの実績と感動を残してくれた皆さんは、私にとって「一生の宝物」であります。皆さんが残してくれたものは、後方に控える後輩たちが校訓である「伝統の力」として、さらに高千穂中学校の発展に邁進してくれると信じています。

さて、皆さんがこれから迎える未来は、デジタル化、IT化など、産業技術の著しい発展、そして多様な価値観が溢れる時代であります。そのような社会を背景に、本日、夢や希望に胸を膨らませ、決意を新たに羽ばたいていく皆さんに、二つのことについて話をさせていただきます。

一つ目は、「人間力」を高めてほしいということです。創造性、コミュニケーション能力、公共心、相互啓発力、柔軟性など、「人間力」には様々な要素が含まれます。変化の激しい昨今、世界の情勢や経済は不安定を極めています。今日(きょう)までの正解が、明日には不正解となることさえある時代の中で、その都度新しい答えを生み出すことが求められています。また、人種、国籍、性別、文化といった、異なる価値観が混在する多様性の中で生きていく時代であります。より多くの人と良好な対人関係を構築し、互いの知識や技術を共有しながら、共に課題を解決していく力が必要です。「人間力」の高い人は、相手の立場や文化に配慮し、柔軟かつ適切な対応をとることができます。これは人間ならではの能力です。これからの社会を生き抜いていくためには、この「人間力」が必ず力を発揮します。

二つ目は、人から大切にされる存在から「人を大切にする存在」になってほしいということです。さんは、これまで「高千穂の宝」として、大切に育てられてきました。大切に育てられ、また、他者を大切にする優しさのある皆さんの存在は確かな意味があり、誰かにとって価値ある存在に間違いありません。これから、ますますAIの技術が進歩するでしょうが、人間だからこそ、もち合わせているもの、その一つがこの「人を大切にする」という優しさです。相手が何を感じているのかを感じ、理解するとともに、その相手に対して、自分はどうするべきなのか、どうあるべきなのかを考え、主体的に行動することができる力です。周囲に流されることなく、「人を大切にする」ということを軸として判断し、行動してください。人を大切にするということは、問題解決の手段にもなり得るからです。

けれど、時にはつい、いやな感情を抱いたり、他者と衝突したりすることもあるでしょう。でも大丈夫です。100%完全な人はいません。振り返り、改善点があれば直していけばいいのです。今年1月、アジア人として初めてアメリカの野球殿堂入りを果たしたイチロー氏は、満票選出ではなかったことに対して、直後の会見で、次のようことを話されました。「1票足りないというのはすごくよかったと思います。いろんなことが足りない、人って。それを自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思うんですよね。不完全であるというのはいいなって。生きていく上で、不完全だから進もうとできるわけで、そういうことを改めて考えさせられる。見つめ合える。そこに向き合えるというのはよかったなと思います。」と。

保護者の皆様、3年間本校の教育活動に対し、ご理解と温かいご支援、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。お子様は、本校での学校生活を経て、心身ともにたくましく成長されました。これからも、お子様の輝ける前途を温かく見守っていただき、時には励まし、支えてくださいますよう、心から願っております。

私事ではございますが、教職生活の集大成を、校長として2年間高千穂中学校で過ごせましたこと、皆さんとの出会い、学び会えたことは、私の人生にとってかけがえのない時間でありました。この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。

この高千穂の地は、まもなく桜やおがたまの花が咲き、命の躍動する新たな季節を迎えます。卒業生の皆さん、皆さんの「存在」そのものが、周囲に勇気と希望を与えることがあるということを決して忘れないでください。そして、自信と誇りをもち、さらなる高みを目指して学び続けてください。必ず巡る自然の強さに思いをはせつつ、力強くこの学び舎を巣立つ皆さんの限りない前途に幸多からんことを祈念いたしますとともに、夢あふれる未来を祝福して、式辞といたします。

   高千穂町立高千穂中学校  第31代校長 金丸智弘

【校長室】噛み噛み王子

今年度の卒業式は3月17日(月)に実施する。本日、その予行練習を行った。これまで、3年生はもちろん、2,3年生の代表も動きや所作など、何度も何度も練習を重ねてきた。もともと集団行動がしっかりとできる素直な生徒たちなので、練習にもそれほど時間を費やさない。本日の予行もそれなりに及第点を出す内容であった。ただ、人間は欲深いもので、目標をある程度達成するとさらに高い目標をかかげ、新たな努力を始める傾向が強い。一通りの予行練習が終了すると、予想どおり主幹教諭が全職員を体育館前方に集め、気になる点の確認を始める。私は満足しているのに、「これでもか」とさらなる完成度を求めて意見が飛び交う。先生方は、まだ満足していない。燃え上がる炎のような目をしていた。「あっ、熱い」。起立・着席のタイミング、礼の揃え方、歌のハーモニー、代表者の歩行速度、返礼等、次から次に出てくる課題。「今から大丈夫か・・・」という私の不安をよそに再度練習が始まる。素晴らしいのはそれらの課題を2~3回の練習でクリアするところである。当日は素晴らしい卒業式になること間違いないと確信した。

その後、3年生の修了証授与式を行い、各種表彰へと進んだ。対象生徒が多かったものの、事前に担当職員ともしっかり打ち合わせていたので、安心していた。決して油断ではなく、万全の状態で臨んだということである。が、それは「つもり」であった。実際に表彰に入ると、噛むこと数えきれず。もちろん、読み上げる練習は何度も何度も繰り返し行った。見た目とは違って、用心深い私は準備に余念がない。それには自信がある。にもかかわらず、噛む噛む。場内にどよめきが走るのではと思いきや、えらいのは全校生徒。私が噛んでも笑わない。何度噛んでも騒がない。ざわつかない。そういう態度だからこそ、なおさら申し訳ないという思いで、目の前の生徒を見ると、全身緊張状態。真っ赤な顔で直立不動。「生徒がこんなに頑張っているのに」「や、やばい」「これじゃいかん」と自分に言い聞かせ、気を取り直そうと試みるものの、状態は好転しない。これでもかと噛む噛む噛む噛む。「はにかみ王子」ならぬ「噛み噛み王子」(王子という年でもないが)状態とは、まさにこのこと。先生方を不安にさせてしまったかもしれない。でも、安心してほしい。これだけ噛めば、卒業式本番で噛むことはないだろうと、悠長にポジティヴシンキングができるのも私である。

当日、気温は若干低くなるものの、土日の雨も曇りにまで回復しそうである。式の準備も順調に進んでいる。今、午後3時を回った。午前中の悪夢がじわ~っとよみがえってきた。「よしっ」と、卒業証書授与と式辞の練習に取りかかる私であった。

【校長室】裏方

2月16日(日)の午後、高千穂神社の神楽殿において、「お披露目かるた大会」が開催された。これまで高千穂町にまつわる「かるた」がいくつか作成されてきたらしい。今回は高千穂町役場総合政策課が主催となり、地域の小・中・高校生や一般の方々等に公募し作成された。計画は数年前からあったようだが、実質的な作成委員会が立ち上がって、1年ほどで完成した「高千穂いいっちゃがかるた」。主催者の熱い思いや地域住民の郷土愛の高さにただ驚くばかりである。この「お披露目かるた大会」に先立ち、絵札や読み句の採用者への表彰が行わ、本校からは、絵札の部で4名、読み句の部で13名が表彰された。上位優秀作品には副賞として、高千穂町の商品券や高千穂牛の引換券等もあり、紹介と同時に歓声が沸き上がった。同かるたに採用されたことは、まさに栄誉なことであり、受賞者の皆さんが、満面の笑みを浮かべていたのがとても印象的であった。

この大会には、本校から、選手として1年1名、2年5名、3年5名の計11名が参加した。予め振り分けられた1チーム3名による団体戦で、中には小学生低学年の児童も参加しており、保護者の撮影合戦が白熱していたことは言うまでもない。初戦こそ、遠慮がちであった本校生徒も、2回戦あたりから本気モードに変わり、社会人はもちろん、小学生相手にも遠慮無く「はい」、「はい」、「はい~」と容赦の無い戦いを挑んだ。しかし、小学生の勢いはとどまることを知らず、中学生たちは完膚なき敗北を喫した。

ところで、選手以外にも、運営・審判、読み手等、7名の生徒がスタッフとしてボランティアで参加し、裏方として大会を支えた。生徒会役員、部活動生、放送委員、3年生(進学内定生徒)等、多種多様な生徒たち。学年や組織など関係なく、みんなが分け隔て無く仲がよいのも本校生徒の特徴である。この「裏方」とは、「芝居で、舞台の裏側で働く人。大道具・小道具・衣装・音響・照明などの係、伝統芸能での囃子方(はやしかた)などのこと。」また、「表に立たず、陰で実質的な仕事を引き受け、すすめる人。」のこと(コトバンク、デジタル大辞泉より)を言う。表舞台の選手が快く競技できるよう、裏方として、決して目立つことなく、運営に全力を注ぐ。選手だけでなく、進行係との確認、勝敗判定、会場内の応援者への対応等、あらゆることに神経を研ぎ澄ます。自分は目立たず、縁の下の力持ちとして尽力したおかげで、選手の皆さんは心置きなく、競技に集中できていた。大会そのものが第1回目ということもあり、ぶっつけ本番的なことや中には緊急対応を依頼されることもあったらしい。本校前生徒会長もその一人であるが、開始直前に依頼された業務も無難にその任務を果たした。運営そのものに多少のバタバタ感があったが、みんなで補い合いながら、手づくり感溢れる大会となった。会場の皆さんは、厳粛すぎず余計な気を回さなくてよい分、心置きなく楽しむことができたのではないか。主催者の皆さんからは、「中学生がよく働いてくれている。」と。生徒の小学生時代を知る校長先生からは、「子供が成長している。」等という言葉を聞くことができ、校長としてとてもうれしい気持ちになり、生徒を誇らしく思う。

高千穂郷土かるた協会の皆様、作成に携わられたすべての関係者の皆様、すばらしい「高千穂いいっちゃがかるた」の完成、誠におめでとうございます。そして、お疲れ様でした。

【校長室】CRISIS MANAGEMENT

令和7年1月13日(月)21時19分頃、スマートフォンから、けたたましい音量で緊急地震速報が流された。日向灘を震源とするマグニチュード6.9(速報値)、震度5弱の地震が発生したというものであった。宮崎市の自宅にいる妻と実家にいる両親に連絡をし、無事を確認。関東に住む3人の子供たちにもその旨連絡をした。昨年8月8日(木)16時42分頃に、発生したマグニチュード7.1(速報値)、震度6弱の地震は、授業日であれば、下校中の時間帯。夏休み期間中だったため、生徒への直接的な被害はなかったが、校長会で情報を共有し、登下校中に地震を含む自然災害に遭遇した場合の避難、いわゆる「命を守る行動」について、再確認と生徒への指導及び保護者への啓発を図った。

今回の地震では、海岸線付近で津波警報が出され、避難指示が出された地区もあった。翌日朝のニュースでは、高台に避難する方々の映像が映し出されていたが、避難所の開設が遅れ、高台の施設近くで右往左往する姿も見られた。それだけ、住民の避難が早かったと考えれば、「命を守る行動」がしっかりと身に付いてきたとも捉えることができ、危機意識の向上がなされているという喜ばしい現象でもある。

私の勤務する高千穂中学校は、中山間地域である。標高300m以上の地域にあるため、津波の心配はほぼ皆無に等しい。しかし、近年の自然災害では、中山間地域における土砂災害により、多くの人的被害が発生している。国が公表する土砂災害危険箇所はおよそ、52万箇所あるものの、防災施設の整備率は20%代と低い水準であると耳にする。本校の南西側は、観光で有名な高千穂峡のほぼ真上に位置しており、断崖絶壁のため、災害時に山をくだるという避難方法の選択肢はない。中山間地域は集落の多くが山腹斜面及び谷沿いにあり、土砂災害危険箇所に指定されている地域がほとんどであり、本校も例外ではない。

毎年、避難訓練を実施しながら、「本当にこれで良いのか」と不安があるのも事実である。災害時には孤立しやすい地域。避難後の集合場所は、現段階では、校庭ではなく、さらに高台の避難所へ避難するように共通理解を図っているものの、本当にそれでよいのか。というのも、高台へ移動するための県道への動線は2通り。しかもその県道には、4階建ての集合住宅が数棟建っている。地震発生時の初期対応訓練(揺れへの対応)での基本行動は、「どこにいても、どのような状況でも『上から物が落ちてこない』 『横から物が倒れてこない』『物が移動してこない』場所に素早く身を寄せて安全を確保し、揺れがおさまってから避難すること」が鉄則であるが、揺れが収まるまでの時間や高台への移動時にも危険が待ち構えているのである。東日本大震災の発生時、避難訓練度どおりに避難をしたものの、避難所近辺が危険であることを察知し、さらに高台へ避難をするという「想定外を想定」した結果、99.8の生存率を誇った「釜石の奇跡」。いったいどの避難方法が「命を守る行動」になるのか。地震発生時は、防災無線等の機器が使用不能になることも十分想定される。情報を受け取った人が順次行動に移していかなければ犠牲者は減らない。「釜石の奇跡」を起こすきっかけとなった岩手県釜石市鵜住居地区居住の皆さんは、地震発生後すぐに高台にある避難所に避難を始めたと聞く。避難の途中地域住民と協力しながら、小・中学校の児童・生徒にも声をかけながらひたすら高台へ避難したとのこと。

1月13日(月)の地震発生直後は、町役場の災害対策室から、何度も何度も「注意や命を守る行動をとるように」という放送がなされた。県内でも有数の高齢者の多い高千穂町であるからこそ、地域全体で「一人の犠牲者も出さないため」の行動がいかに大切か。全国各地で毎年頻発する大雨や地震災害を決して他人事とせず、いざという時のためにやはり訓練は必要である。テレビで災害地や避難所の様子を見たり聞いたりするだけでは本当の大変さは決してわかるものではない。教職員、生徒一人一人が、災害に対する緊張感を維持しながら、これからも「一人の犠牲者も出さない」危機管理に努めるために、再度地震発生時の避難方法等の見直しに取り組んでいるところである。

【校長室】SIN化

 

 2学期の終業式で話しました「慎独」。覚えてますか。皆さんが自分を律して規則正しい生活を送ってくれたおかげで、大きな事故もなく、令和7年を迎えられたことをとてもうれしく思います。

先ほど、各学年代表の皆さんが3学期の抱負を発表してくれました。1,2年生代表の抱負には、偶然にも「みんなをまとめる」という共通の目標がありました。自分のことだけでなく周囲のことにまで気にかけるという心の成長を感じます。3年生は、志望校全員合格という決意を述べてくれました。新たなステージに進むための覚悟があります。そして、生徒会からは、スローガン「SIN化~新しい一歩を踏み出そう~」について、様々な意味があること。そしてそれを達成するためには全校生徒の協力が必要不可欠だと発表してくれました。

この3学期は、3年生にとっては人生の大きな転機となる時期であります。そうです。受験です。ちなみに、全校生徒に伺いますが、皆さんは何のために勉強をしていますか。志望校に合格するためですか。もちろん、それも理由の一つでしょう。否定するつもりもありません。ただ、それは、単なる受験勉強であり、勉強のすべてではありませんよね。むしろ、大人社会に進む過程の一つに過ぎません。その先には、大学受験や就職試験、また、それぞれの職場で自分の能力を高めていくためにも常に勉強は必要です。1年後、5年後、10年後と皆さんの将来、いわゆるキャリアをデザインし、各段階における目標を達成するためにも、学び続けることが大切だと思っています。

話はそれますが、皆さんは「社会人基礎力」という言葉を聞いたことがありますか。「社会人基礎力」とは、経済産業省が提唱したことばで、3つの能力と12の要素から構成されています。簡単に説明しますと、一つ目は「前に踏み出す力(アクション)」です。失敗しても粘り強く取り組む力を指します。具体的には、常に言い続けている主体性の他に、実行力、働きかけ力が挙げられます。指示待ちにならず、自分で物事を捉え、自ら実行できるようになることが求められています。二つ目は「考え抜く力(シンキング)」です。疑問をもち、考え抜く力を指します。課題発見力、計画力、新しい価値を生み出す創造力が挙げられます。三つ目は「チームで働く力(チームワーク)」です。多様な人々と目標に向けて協力する力を指します。自分の意見をわかりやすく伝える発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規則性、ストレスコントロール力が挙げられます。グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められています。このように「社会人基礎力」とは、言い換えれば、企業が求める人材像のことなんです。

勉強は志望校に合格すればそれで終わりではありません。志望校合格は、皆さんの夢実現の第一歩に過ぎないということです。昨年、3学期の始業式で、2、3年生の皆さんに「ウエルビーイング」についてお話をしました。このウエルビーイングとは、「すべてが満たされた状態かつ継続性のある幸福」を意味します。それは、「夢が実現された状態」とも言えます。ただ、私たち人間は自分の夢や希望が叶うと、すぐにまた、新たな夢や希望を抱いてしまいます。ですから、先ほどお話しした「社会人基礎力」の12の能力要素を少しでも多く身に付けられるように、また、生徒会のスローガンである「SIN化~新しい一歩を踏み出そう~」のように、少しずつ進化していく必要があります。私たち先生は、今でも少しずつ進化しています。少々息苦しく感じるかも知れませんが、それが生きている証だと校長先生は思います。

3年生の中には、すでに、進学を確定している生徒もいます。また、合格できるか不安になって、志望校を変更しようと悩んでいる生徒がいるかも知れません。校長先生はそれでも構わないと思います。受験生とは言え、まだ15歳です。これからの長い人生のことを考えると迷いが出て当然です。いろいろなことを悩みながらじっくり考え、一つずつ、納得しつつ、解決しながら乗り越えて、純粋な気持ちで、挑戦しようとするのが受験生です。そういう3年生に対して、1、2年生は、邪念なく、濁りなく、応援してあげることがとても大切だと思います。そして、そういう3年生の背中を見て学び、次に続いていってください。来年は2年生の番です。全ての3年生の進路決定が上手くいくことを願っています。今年も進化し続け、生きているという実感を味わうことのできる高千穂中学校を一緒に創っていきましょう。

【校長室】慎独

昨年2学期の終業式のあいさつで「これからのあっという間の1年間を来年末に振り返ったとき、『幸せだった』『楽しい1年間だった』と言えるように」と話をしました。2,3年生はおそらく覚えていてくれていると思いますが。皆さんは、この1年間をもう振り返ってみましたか。

今日は、明日から冬休みを迎えるにあたり、「慎独」という言葉についてお話をします。漢字は「慎む」という文字に孤独の「独」と書きます。

現在、日本各地では様々な災害や事故による死亡事故、闇バイトの誘惑など、危険なことがたくさん発生しています。先週水曜日は、保護者迎えによる一斉下校を行いました。急なお願いにもかかわらず、保護者の方々のご理解とご協力を得ることができ、何事もなく全生徒の下校を完了することができました。保護者の方々にも「ありがとうございました」と伝えていただければと思います。

今年の冬休みは13日です。保護者の方々もお仕事等で常に皆さんと一緒にいるわけではありません。その間、皆さんは、自分で考え、判断し、行動しなくてはいけないという、一人の時間が増えるということです。そういう、人が見ていないところでは、たとえよくないこととわかっていても、ついやってしまう時があるかも知れません。人間誰しも起こりうることです。それは、校長先生のような大人にだって言えることです。

先ほど、各代表のみなさんが2学期を振り返ってくれました。

1年生は、学年の反省として、時間を意識して行動することと忘れ物の多さを課題として取り上げ、その解決のために、時間を意識して、計画的に行動することを

2年生は、学級委員長として自分が模範的な生徒になるということや様々な行事を通して、達成感や充実感を味わうとともに団結することの難しさを改めて感じたことを

3年生は、受験勉強に向けて、自分の弱点を見つめ、先生方からアドバイスをいただき、限られた時間の中で効率よく勉強していきたいと

そして、生徒会からは、自分の思いを人に伝えることの難しさや次のステップに進む上での準備をしましょうという話がありました。

代表の皆さんが、2学期の反省をもとに3学期の抱負を語ってくれましたが、皆さん一人一人が心身共に健康で安心安全な生活を送ることができて、初めて新たなスタートをきることができるのです。自然災害に遭遇した際は、「想定外を想定する」。これはずいぶん浸透してきたと思いますので、冬休みのように一人になることが多い長期休業中も気を付けていきましょう。

冒頭で話した「慎独」とは、いかなる状況でも自分を律することができるかを問うことばです。儒教の思想を記した「大学」という古典に書かれている「君子は必ずその独りを慎むなり」から来ています。意味は「自分一人の時でも行動を慎み、道を外れないようにする」ということです。人が見ていなくても、見られているときと同じような行動をとることが大切です。人が見ていないということは、自分しか知らないということ。少しぐらいならいいではなく、「慎独」のとおり、自分一人の時間でも行動を慎み、人としての道を全うするよう心掛けてください。これは、みなさんの健康や安全のためにもぜひ実践してほしいと思います。最終的に、皆さんが何事もなく、無事であることが、校長先生の一番の願いであります。

みなさんが令和7年も日々充実した楽しい生活が送られることを願いながら、令和6年というこの幕を閉じたいと思います。

みなさん、よいお年をお迎えください。

令和6年12月24日  校長 金 丸 智 弘

【校長室】メリークリスマス

18日(木)の朝、担任の先生と一緒に一人の生徒が、校長室を訪ねてきた。調理実習で作ったおやつを持ってきてくれたのだ。今回で2回目。前回のポテトチップスは、塩味がしっかりきいてて、私の好みの味だった。今回はポテトチップスと芋天である。生まれ故郷の都城では「ガネ」というが、好物の一つである。感謝を述べつつ、話を聞くと

① 小麦粉を付けすぎないように注意した。

② 校長先生の体を気遣って、塩味をおさえた。

③ 油がはねないように、優しく揚げた。

とのことである。

確かに、塩味は薄めであったが、それ以上に、生徒の健気な心遣いに心を奪われてしまった。一足先にいただいた最高のクリスマスプレゼント。H君、ありがとう。