以下の記事を、宮崎日日新聞に掲載していただきました。
宮崎西高校附属中学校のESDは、生徒自身の興味が源泉であることから始まる。SDG‘s課題解決に向けての収束思考ではなく、生徒一人一人の無限の可能性を開放し、発散思考でSDG‘sに向かうことこそがVUCAと言われる現代社会の課題解決につながると考えているからである。
ここからは令和3年度日本学生科学賞で全国約30000点の中から旭化成賞を受賞し、令和4年にアメリカで行われるInternational Science and Engineering Fairに日本代表として参加する本校普通科2年生の加藤さんの課題研究を例に、本校のESD実践を紹介する。加藤さんは小学校時代から科学実験好きな少年で、宮崎西高校入学後は自分の気になる実験に没頭したいという理由から化学部に入部した。そうして2021年1月に米国Maryland大学の研究グループが「木材の透明化」に関する研究論文を発表したのを目にした。本県が全国2位(R1)の木材生産産出額であること、環境に配慮した方法で木材の透明化に成功していることに刺激を受けて、論文に示された技術の追実験を行った。この実験が評価されて前述の受賞につながることとなる。
この理由を彼は次のように答えている。「ただ単に実験が好きで、それをやれるのが西高」このように本校のESDは、生徒一人一人の興味が自ずとSDG‘sに向かうようなESDと言える。(東口匡樹)
宮崎西高校では、「学びに向かう力」があらゆる教育活動で全職員に共有されている。全教育活動で職員が生徒の背中を押して「学びに向かう力」を醸成し、生徒が自ずとSDG‘s課題解決に向かうのが本校のESDである。
ここからは前回に続き、ISEF日本代表に選出された加藤朋大さんの課題研究を紹介する。アメリカ・メリーランド大学の原著論文を読んで、彼はエポキシ樹脂を浸透させることにより,木質のもつ生分解性が失われると考え,実験に取り組み数々の失敗を重ねた。しかし決して諦めず、ついに環境負荷の小さい流動パラフィンを浸透させることで,米国のものとは異なる透明な木材『パラフィン・ボード』をつくりだすことに成功した。日本独自の技術である「パラフィン紙」(薬包紙)に似た,この『パラフィン・ボード』は光透過性とともに,高い生分解性と機械的強度を保持しており,持続可能な社会の実現に向けた,有用な素材となりえると考えられる。実際に最終審査の席で,審査委員から特許を取ることを勧められた。
彼は、諦めなかったのは担当の先生の惜しみない伴走のおかげだという。彼は今後もこの研究を継続していきたいと考えている。
このように本校のESDはあらゆる教育活動で生徒の「学びに向かう力」を醸成し、生徒が自ずとSDG‘s解決に向かうようなESDと言える。今後も生徒の無限の可能性を後押ししていくESDを展開したい。(東口匡樹)