心の声

【校長室】令和6年度第1学期始業式 校長挨拶

 皆さんおはようございます。いよいよ今日から新年度が始まりました。この一学期の始業にあたり、皆さんに「めざす生徒像」を紹介します。

 このめざす生徒像というのは、皆さんに“こういう生徒になってほしいという「願い」、または「目標」のことであります。

高千穂中学校のめざす生徒像は、

① 多様性を理解し、自他を認め、思いやりをもって接する生徒

② 主体的に行動し、志(ゆめ)叶うまで挑戦する生徒

③ GLOCAL精神をもち、ふるさとを大切にする生徒

以上の三つです。

 この具体的な意味は、入学式でお話ししますので、それまで、皆さんなりによく考えてみてください。

 さて、コロナが沈静化し、私たちの生活様式において、様々なことに変化がもたらされていますが、新しい学年が始まります。皆さんはどのような目標を立てましたか?人それぞれでしょうが、「昔はどうだったかな」と過去を振り返りながら、今をどう変えるかということも大切ですが、“未来を見据えて変化し続けることも、さらに大切なことだと思っています。と言いますのも、皆さんはこんな話を聞いたことがありますか。

 ある国で、村人たちが村を行き来しながら暮らしていました。他の村から来た旅人が、村の入り口にいる門番に、「ここはどんな村ですか」と尋ねると、門番は「あなたが今までいた村はどんな村でしたか。」と聞き返します。旅人が「私の村は、ひどい村でした」と答えました。すると門番は、「ここもたぶん同じような村ですよ」と答えました。また、別の旅人が「ここはどんな所ですか」と聞きました。門番は、同じように旅人に聞き返したところ、その旅人は「私がいた所は、とても素敵な所でした」と答えました。門番は「ここもたぶん同じような所だと思います」と答えました。

 これだけの話なんですが、結局これからどのような村にしていくか、どんな所になっていくのか。これまでの過去とこれからの未来を、「今」とういうこの瞬間をどう繋ぐのかということであり、その節目が 「今」 であるということです。自分がどんな志(ゆめ)をもち、自分はどうありたいか。周りや他人とどう接していくか。皆さんが、自分ではっきりとした未来を想像すればするほど、やる気が引き起こされることが、心理学でも証明されています。未来を想像することで、目標に向かうモチベーションがより高まるということです。

 さきほど、3名の代表の生徒が、話をしてくれました。まず、新2年生代表の生徒は、「まわりには尊敬できる人がたくさんいる。そういう人たちのおかげで、学級が成り立っている」ことに感謝していました。次に、新3年生代表の生徒は、受験勉強を頑張ることを宣言しました。また新入生に対し、「この先輩についていきたい」と思われるようになりたいと最上級生としての思いを述べてくれました。そして、最後に生徒会代表の役員は、高千穂中学校をよくするために必要なこととして、学習態度とSNS3カ条、主体的に行動することの3つを掲げてくれました。代表の皆さんの新たな決意が感じられる発表だったと思います。

 最後になりますが、本日、皆さんは進級します。おめでとうございます。3年生は1年後どういった進路に進んでいるのか。そのための努力をしっかりとしてください。自分の進路は自分で切り開いていくことです。また、勉強だけではありません。卒業生から繋がれた高千穂中学校の「伝統を力に」どんな歴史をつくっていくのか期待しています。2年生は後輩ができます。後輩にとって模範となるようにしてください。そのために大切なことは、少しずつでも良いので自分自身が「成長していくこと」、そして、新たなことを「学ぶことから逃げない」ということです。学校は様々なことを「学ぶ」場所です。志を高くもって「学ぶ」ことを続けてください。学ぶということは自分が成長という変化を得ることです。志に近づいていくということです。来年、この一年間を振り返ったときに、今の皆さん自身と比べての成長を実感してくれることを期待しています。

令和6年4月5日(金)

【校長室】最終章

 校長としての一年間が過ぎた。2学期くらいからであろうか、校長としての日常にも慣れ、落ち着いて職務を果たす日が続いた。立場上様々な人との出会いがあり、挨拶を交わす機会も増えた。年度初めにコロナ感染症が五類に移行し、徐々にマスクを外す人が目立ちはじめた。人間の脳は優れており、目元だけで、マスクの下に隠れている鼻や口の形等を想像し、勝手に相手の顔立ちを作り上げてしまう。その結果、マスクを取ると別人と判断してしまうことも多々あり、地域で会っても素通りしてしまうことも少なからずあった。そのため、およそ2倍の人を覚える必要があり、正直苦労した。さすがに最近では、顔も名前もずいぶん覚えることができ、当たり前のように日常会話をすることができるようになった。

 さて、卒業式、異動内示、県立高校入試合格発表、修了式、校内人事、離任式等々、この年度末は予想以上の慌ただしい日々が続き、気持ちの整理がつかぬまま、令和6年度を迎えた。8名の教職員をお送りし、新たに7名の方々をお迎えした。全国的な少子高齢化減少は、この高千穂町にも大きな影響を与え、生徒数の減少や私立中学校への転出のあおりを受け、学級数は変わらないものの、教職員数は令和5年度より減ってしまい、先生方は負担増となってしまった。私は今年度で役職定年となる。人生の節目、セカンドライフをどう楽しむか。やりたいことがあり、夢を描くだけでワクワクするが、まずは最終年度、校長としての責任を果たすべく、教職員一同、現実を真摯に受け止め、気持ちを切り替えて、みんなで力を合わせて学校運営に取り組んでいきたい。幸運にも、本町の小中学校6校の校長先生方は全員留任である。心強い同士とともに令和6年度を乗り切っていく所存である。

第31代校長 金丸智弘

【校長室】卒業式を前に

 明日第77回卒業式を実施する。これまで何回も卒業式に参加してきたが、第3学年学級担任としての卒業式は、2回しかない。1回目は出席番号1番の氏名点呼途中ですでに泣き崩れ、その後悲惨だった(他からは史上最高の卒業式だったと言われるが)ことを覚えている。もちろん、一番の生徒の名前は、今でもはっきりと覚えている。2回目は6年前で、昨年成人を迎えた子供たちである。そして今回、管理職しかも校長という立場で参加することになる。定番の衣装であるモーニングは父から譲り受けたが、上半身が入らずレンタルで準備した。

 ところで、卒業式の礼法指導と言えば、3年の先生方や保健体育科、生徒指導部の先生方が中心となって行いがちであるが、本校では生徒主体で練習をさせた。学年での予行練習を重ねながら、時折顔や口を出し、少しずつ修正していった。その中で感心するのは生徒の取り組む姿勢である。集団行動が行き届き、場の力が根付いている生徒たちにとって、各所作を身に付けるのは造作もないことのようである。細かな指導を加えても即実践し、対応できる力がある。あとは、卒業式当日、本来の力を十分に発揮できるかである。そもそも生徒の能力はあるものの、教職員の指導が熱心すぎて至れり尽くせりである本校。いつのまにか教職員の顔色をうかがいながら行動するような場面も・・・。「指導どおりに動くことはできるが、生徒主体の動きができない。」これが本校生徒の大きな課題であった。そのため、1年間かけて、生徒が主体となって活動する機会を増やし、生徒の失敗に対し、叱責ではなく成功への導きを中心とした指導をするよう、先生方にお願いしてきた。おかげで様々な場面で生徒の活躍を目にすることが増えた。時には、教師の意にそぐわない行動もあるが、それも成長の一過程と捉え、見届けながら指導に生かすか、それとも、以前のように教師主導で生徒の主体性を後退させるか。それは、本校教職員の心構え一つである。少なくとも生徒の成長する機会を我々教職員の主観や都合で奪うわけにはいかないようにするのが、校長の職務の一つである。

 そういう観点から、生徒主体の式練習を推進したところ、予行練習はなかなかのできばえであった。当日は、およそ28名の来賓がお越しになる。その人数を3年生に伝えたとき、歓声が上がったことにびっくりした。3年生も多くの地域の方々に晴れ姿を見てほしいようである。私も生徒の名前を読み間違えないように、そして授与のタイミングや式辞の読み方等、多くのことに気を配りながら、卒業式当日を迎えたい。生徒にとって、保護者にとって、地域の方々にとって思い出に残る卒業式ができると確信している。

令和6年3月14日(木)

【校長室】新たに

 先日、立志式を実施した。この「立志式」とは、中学2年生が、日本において古くから伝わる「元服」にあたる儀式を行い、一人の人間として『志』を立て、人生の方向性とそれを成し遂げるために、自身の将来を設計する式である。コロナ禍の3年間は、規模を縮小し、総合の時間に生徒主体の運営で実施していたが、昨年度5月にコロナが5類に移行し、学校における行事等、様々な教育活動の見直しがされている今、この立志式の実施方法についても第2学年が中心となって検討を重ねた。全てをコロナ以前の実施方法に戻す必要もないが、儀式的行事であるため、来賓の御臨席を賜り実施した。

 ところで、令和7年度には上野中が高千穂中に統合される。その準備を少しずつ行っているが、同じ町内の中学校とは言え、それぞれの学校文化は異なる。一つにまとめていくのは決して容易なことではないが、働き方改革やコロナ感染症の5類化移行により、コロナ「以前の」学校生活にほぼ戻り、教育課程の見直しが加速化している今、「新たな学校づくり」の良い機会であるとも言える。ただ、学校教育の現場は、前年踏襲をする傾向が依然として根強く残っているのは否めない。学校現場はなぜそんなに「以前」にこだわるのか。「以前」がすべて正しいわけでもない。むしろ、教師の負担軽減を図ろうと、全国で「働き方改革」に向けて様々な取組を行っているにもかかわらず、「以前」のような計画を企画・立案し、何とか実施しようと試みてしまう傾向がある。あたかも「以前」のように実施することが正しいとしているかのようである。実際、現中学生は「以前」の中学校の行事をほとんど知らないので、この3年間中止されていた教育活動はそもそもないものとして、また、縮小されていることは、それが「通常」と捉えている可能性が高い。そういう観点からも、「以前」を植え付けられていない現中学生にとっては、「新たな学校づくり」は絶好のチャンスとも考える。

 私の学校経営上の視点は「生徒にとってどうなのか」である。学校における様々な教育活動を実践していく上で、我々教師の意向の前に、主役である生徒にとって有意義なものであるか、生徒の実態に応じているか、あるいは生徒の考えがしっかりと反映されているか等を重要視している。生徒は、様々な制約がある中で、どのようなことに注意して、どのようにすれば楽しく充実した学校生活を送ることができるのかという場面に何度も直面し、多くのことを学んできた。したがって、柔軟性や適応力は高くなっている。むしろ、過去にとらわれ、不易と流行になかなか乗りきれないのは教師の方ではないだろうか。次年度の教育課程を編成していくなかで、予測困難な時代を力強く生き抜くことができるように生徒を教育していくためには、思い切った改革が必要であり、それが、上野中との統合後、「新たな学校づくり」を目指す令和7年度の基盤となると言える。

 さて、上野中との統合が報道されてから、統合後の学校生活がスムーズに行われるように、本校と上野中の生徒会が交流をはじめた。上野中は令和6年度が最後となる。閉校に向けて何かと忙しい日々が続くと予想される。高千穂中としては、統合後のことを考え、様々なことを準備しておく必要がある。統合後は、「以前」が通用しない。何を引き継ぎ、何を残して、何を新しくするか、両校のよさを取り入れた「新たな学校」をつくっていきたい。修学旅行こそ、小中学校それぞれ合同で実施されてはいるものの、校舎、教員、学級、部活動等々、交流を計画してとは言え、統合への不安は少なからずあると思われる。さらに、地域や保護者はどうなのか。これまで引き継がれてきた伝統や慣習等、意識や感覚の違いもあるのではないか。それぞれの想いに耳を傾け、お互いの「こうあるべき」という想いの違いを確認し、少しずつそろえていきながら慎重に合意形成に取り組んでいきたいと考える。

令和6年2月8日(木)

【校長室】大切なもの

 長女から、シンガポールの友達Nが新婚旅行で宮崎を訪れるという連絡が届いた。Nは長女と同じ年齢で、高校時代に留学生として受け入れたことがある。それが縁となり、2012年、2017年に続き今回3度目の来日となる。その間、長女もシンガポールに旅行し、N宅にお世話になるなど交流が深まった。そして今回、自身の結婚報告を兼ねて本県旅行を決意したとのことである。二人に同行したNの姉や私の長女夫婦も来県したので、思い出に残る旅行になるようにと私なりに思いを巡らせた。ただ、綿密に計画を立てすぎると、定番化された観光や食事になり、来日(県)者が、ただ設定された舞台に立つだけの“通過儀礼”のような体験になってしまい、唯一の思い出にはなり得ないと考えた。お膳立てされたものより、最小限度のレールのみ敷いて、その後は来客者自身に考えてもらい、その時の気分に任せてみた。焼肉店での注文をはじめ、自宅で振る舞った鳥のタタキ、刺身、およそ1時間待った辛麺、おせち料理等の食事、高千穂峡や天安河原の長い階段や坂道、高千穂神社等の神前での所作、雨の中のアマテラス鉄道グランドスーパーカート等々の観光、成り行き任せの体験は意外にも好評であった。それぞれの体験の本質的な意味や価値を体感していただくことで、観光という地域の“命”、食事そのものの“命”を十分味わうことができたのではないか。そもそも体験は既知と未知との間で新たな発見があったり、自身の価値観の変革や自己の新たな覚醒を実感したり、貴重な出会いやさらなる知識習得の自覚が大切である。私なりのおもてなしは、その成果を十分に発揮したのではないかと思う。そして12月30日に宮崎入りした彼らは、令和6年1月2日の正午過ぎ、次の旅行先へ旅立った。そう、羽田空港での航空機事故が発生する直前だったのである。

 新年早々、地震による災害や航空機事故等で、多くの貴重な命が失われた。メディアによる連日の痛ましい報道には、胸が痛くなる。日本は周囲が海囲まれた島国である。季節があり、四季折々の自然から尊い恵みを受けている。その反面、地震等の自然災害のリスクも多い。九州の中央部に位置している高千穂町では、地震や大雨、台風、大雪等による災害が予想される。したがって、学校施設は大規模災害等に際し、第一に生徒や教職員の安全確保と同時に地域住民の避難所として果たすべき役割を担っていることから、避難生活や災害対応に必要な機能を備えることも求められている。しかし、本校は高千穂峡の真上にあり、土砂災害危険区域に指定されている地区でもあるため、その機能を果たしていない。数年後には中学校の移転新築も計画されているが、時間や場所を選ばず発生する自然災害に関する危機管理は特に重要である。学校保健安全法に基づく「危機管理マニュアル」の作成には力が入り、避難訓練の実施には緊張が走る。そして訓練後の反省を次に生かして、マニュアルの内容を毎年更新してはいるものの、果たして実際の災害時、それを生かしきることができるのかがカギなのである。

 被災した石川県へ支援物資を運搬しようとした海上保安庁の航空機が日航機と衝突し、海上保安庁の隊員の尊い命が失われた。とても悲しい事故である。一方、日航機は一人の犠牲者を出すこともなく(ペットの命は失われたが)、全員脱出することに成功した。今回の事故では、避難経路等の確認の際、機長と交信ができず、コクピットから機内への連絡もほぼ途絶えていたとのこと。「緊急時のブザーが何回かにわたって繰り返し繰り返し鳴っていたので、操縦室からも連絡をしたかった。コンタクトを取りたかったけれども取れなかった状況だった・・・」というように、乗客の安全な脱出は、CAの判断に委ねられる状況だったようである。でも、そのブザー音でJALのCAは、「これは緊急事態に違いない」と判断して、目視で火災状況を確認し、安全なドアだけを選んで開け、避難誘導を開始させたとか。その的確な判断と勇気ある行動力には感服するばかりである。結果的に全員無事で脱出できたということは、定期的な訓練や日常的に緊張感のある勤務態度が、最悪の状況下で最高の結果に結びついたのであろう。

 本校では今年度3回の避難訓練を実施した。私は「予想外を想定」して訓練に取り組むよう、教職員や生徒に意識づけている。災害発生等の緊急時に生徒にとって最も身近にいる現場の教職員が最善の判断をし、決断をくだし、行動できるよう、私を含め全教職員の危機管理能力を高めていくよう、人材育成に力を注ぐ所存である。諸先輩の校長先生方の危機管理能力には未だ遠く及ばないが、生徒ファーストの考えが全教職員一人一人に浸透するような学校経営を今後も心掛けていきたい。

令和6年1月23日(火)