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2024年4月の記事一覧

【校長室】初めての手術入院顛末

 私事で恐縮だが、先週心臓のアブレーション手術を受け、二日前に退院した。

 不整脈と診断されたのは今からおよそ7年前。学校の定期健診で見つかった。どういう病気かある程度はわかっていたものの、若気の至り(年齢的に決して若くはなかったが…)でそれほど気に留めず、専門医を受診することはなかった。

ある年、教え子の看護師と話す機会があった時、何の気なしに軽い気持ちでその旨話したところ、思いがけず厳しく注意を受け強く受診を勧められた。それでも仕事が忙しいことを言い訳に病院に行くことはなかった。

そんなある日、胸の激痛と呼吸困難に襲われた私は、近くの大学病院に駆け込むことになる。応急処置として点滴を受けながら、再度強く専門医への受診を勧められた。しぶしぶ最寄りの病院で専門医による検査・診察を受けたところ、結果は「病気のオンパレード」。もともと体力に自信があったため、高を括って放置していたら、とんだことになっていたのだった。担当医師曰く、「(治療しなければならないところはたくさんあるが)特に心臓は早急に手術を受けたほうがよい」とのこと。

にもかかわらず、私はまたしても仕事を言い訳に(ちょうどその頃管理職試験を受けていた)、手術ではなく、服薬で悪化を防ぐ治療方法を選択したのだった。それからも、幾度となく手術を勧められたが頑なに断り続けていた。その間薬の種類はどんどん増えていった。

そして昨年、校長として高千穂中学校に転勤となり、宮崎市内のかかりつけ医から紹介状をもらい、通院に便利の良い町立病院で薬を処方してもらうようになった。高千穂での昨年秋の検査結果で、再度手術を勧められ、初めて手術を受けることを前向きに考えるようになった。そんな矢先、深夜に体調が悪くなり、自分で車を運転して病院へ急行。そこでようやく迷いが吹き飛び、手術を受けようと決心した。

昨年末、紹介状を携え宮崎市内に新しく移転した総合病院へ行き、改めて病状を把握するための検査を受けた。後日診断結果を聞くために診察室へ、目の前に座った医師から出た言葉は「私を覚えていますか?」。

なんとなんと、私の担当となった主治医は他でもない、7年前「病気のオンパレード」と私に宣告した医師だったのだ。これも何かの縁かな、とのんびり構えていたが、ここまで手術を受けず、服薬でお茶を濁していた私と検査結果に対して医師からは厳しいお叱りをいただくことになり、私はひたすら平身低頭であった。

さて手術を受けるには入院せねばならない。受けられる日程は早くて4月とのこと。年度初めの準備や入学式等の行事との兼ね合いで、4月第3週に決まった。

医療の進歩は素晴らしい。心臓手術が3泊4日で済んでしまうのだ。

それにしても、手術日前日に入院してからというもの、病院スタッフの“報連相”と連携は見事というほかなかった。ついスタッフの動きを仕事人の目線で見てしまうのは職業病だろうか。「何かあったらナースコールで呼んでくださいね」という言葉に甘えてあれこれ言う私のわがままを真剣に聞いてくださり、判断困難な場合はその都度必ずドクターに確認し指示を仰ぐ徹底ぶりにはただただ感心するばかりである。

命を預かる職場、責任感と緊張感の中、どんな場面でも笑顔を絶やさず、懇切丁寧に対応してくれる姿はまさに白衣の天使(最近は白じゃなくてカラフルだけれど、それにこの言い回しも古いなあ)。手術(私が処置を受けたのは「検査室」だった)に向かう途中、そして手術台の上でも、まさに俎板の鯉となってドキドキしている私にかけてくれる「がんばりましょう」の明るい声や、リラックスしたスタッフの笑い声(私を安心させるためであろうが)にどれだけほっとしたことか。

術後のケアについても、1時間ごとに体温や血圧、傷口の確認に来られて、その度に「何度もすみません」と言われる。いやいやそれはこちらのセリフですって!4日間携わってくださったスタッフの皆さんには感謝しかない。 

今回の入院では週休日を含め9日間お休みをいただいたが、その間の校長職務は全て教頭先生に代行していただいた。どの学校にも“教頭”という素晴らしい参謀が配属されているが、高千穂中学校にもすこぶる有能な教頭がいる。留守を任せても安心であるということも、手術を決断する強い後押しとなった。教頭先生にも感謝である。 

初めて入院してみて、改めて学んだことが4つある。

一つめは、報連相の徹底。学校現場で常に口癖のように言っている「連携と報連相」はまだまだ密にする必要があるし、できるのだと感じた。

二つめは、入院中に読んだ刊行物『中学校 №847』29ページ下段中ほどに書かれている言葉である。「…人の力を借りることを学んだ。…これを他力と呼んで、他力を集められるようになったら、それは幸せなことだ…」

教頭をはじめとした先生方、保護者の皆さま、公民館長さんをはじめとした地域の方々…、他力なしでは学校経営は成り立たないではないか。

三つめは、周囲の方々への感謝を日頃から忘れないこと。そして、感謝の気持ちをきちんと言葉で伝えること。今回多くの方々に支えられ、その温かさやありがたさをベッドの上で痛感した。

最後は、健康のありがたさ。

『自分を大切にするひとに』と生徒に説いておきながら、私は私を大切にできていなかった。

「なんでこんなになるまで放っておいたんですか」と叱られて、私は主治医に謝ったけれど、本当に謝らなければいけなかったのは、私自身にだった。不規則なリズムを刻みながらも私を仕事に向かわせてくれた心臓に、身体に、よくここまでがんばってくれたと、今ここにこうしていることが奇跡なのかもしれないと。

助けていただいた命を大切にし、これからの校長職務を全うし、生徒にとってより安心安全な学校経営に取り組んでいきたい。

令和6年4月21日(日)

【校長室】令和6年度第78回入学式 式辞

桜の花びらが風に舞い、葉桜の緑がさわやかなこの佳き日に、高千穂町長 、高千穂町教育委員会教育委員をはじめ、多数の御来賓の皆さまの御臨席を賜り、高千穂町立高千穂中学校第78回入学式を盛大に挙行できますことは、この上ない喜びであります。高いところからではございますが、心より感謝申し上げます。

さて、77名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から皆さんは高千穂中学校の一員となりました。私たち教職員・在校生一同皆さんの入学を心待ちにしておりました。皆さんはこれから、先生方や先輩たちと一緒に中学校生活を送りながら自分の進む道を自分で決め、それぞれの夢に向かって力強く踏み出していく準備をしていきます。誰もが通ることのできる同じレールがあるのは中学校までです。日本の法律に定められた『9年間の義務教育によって学ぶことができる』という環境は、皆さんにとっては至極当然のように思えることかもしれませんが、『社会を生き抜くための確かな力をすべての人々が 均等に身に付けることができる仕組み』であり、世界的にも優れたシステムでもあります。「これからの3年間の中学校生活をどのように過ごすかで皆さんの人生が一人一人違っていくとともに、大きく変わっていく」ということを自覚してください。中学校という全く新しい環境、新しい仲間、そして新しい生活様式等、心配や不安があるかもしれませんが、焦らず一歩ずつ前進し、小学校で培ってきた力を、ここ高千穂中学校でも大きく花開かせてほしいと願っています。そして、3年後の旅立ちの時、「高千穂中学校で学んでよかった」と実感できるよう、充実した中学校生活を送ってください。

そのために、皆さんにお伝えしたいことが二つあります。まず、本校の教育目標です。

「心豊かで知性にあふれ たくましく伸びる生徒の育成」

 これは、自分自身はもちろんのこと、周りの人も大切にし、自分の『夢実現』に向けて、主体的に学習し、行動しながら、成長し続ける生徒になってほしいということであります。

次に、めざす生徒像ですが、本校では三項目掲げています。

一つ目は、「多様性を理解し、自他を認め、思いやりをもって接する生徒」です。

人は一人では生きていけません。支え合って生きています。学校では集団生活を学びますので、仲間を大切にしてください。

二つ目は、「主体的に行動し、志(ゆめ)叶うまで挑戦する生徒」です。

これから自分の『夢実現』に向けて、一歩ずつ確実に前進していくために、己の志(こころざし)をしっかり立て、学習し、知識を得、それを活かして課題を解決する方法を、自分で、そして仲間たちとともに学んでください。

三つ目は「GLOCAL精神をもち、ふるさとを大切にする生徒」です。

まちを歩けば、海外からの観光客を見かけない日はありません。ここ高千穂は、今や世界から注目されている場所だということです。日本でも屈指の美しい自然に囲まれた素晴らしい環境で生活できていることのありがたさに気づいてほしいと思います。また、年間を通して、学校行事や部活動等において、地域の方々のお力添えをいただくことがたくさんあります。周りの支えや温かさを肌で感じることのできるコミュニティに見守られていることに感謝し、地域社会に貢献する気持ちをもってください

さあ、皆さんは、今日から中学生、大人への第一歩を歩み始めました。

時には、保護者や先生からの言葉に反発したくなることもあるでしょう。それは、思春期を迎え、自我意識が高まり、「自分でできる」という気持ちが大きくなってくるからです。それは皆さんが成長しているという証でもあります。~だからといってやたらに反抗していいということではありませんが~心もからだも大きく成長する3年間にぜひ、いろいろなことにチャレンジしてください。時には失敗したり、「無理かもしれない」と消極的になってしまうことがあるかもしれません。けれど失敗の中にも学びや気づきはあります。「日々を生きていること」そのものが学びであるといってもいいでしょう。そして何より、皆さんには可能性があります。その可能性を引き出すのは、先輩たちや地域、保護者の方々、そして、わたくしたち教職員です。ですから、皆さんには臆することなく挑戦していってほしいと思います。本校の先生方は皆さんの挑戦をしっかり見守り、導いていく指導力をもった方ばかりですので安心してください。 

社会情勢は、日々急激に変化しています。今日の正解は明日の不正解かもしれません。過去を振り返りながら未来を見据えて変化し続けることが、今の学校にも必要です。その考え方の基本を、先輩たちはしっかりと身に付けています。伝統を継承しつつ、新入生の皆さんのもつ新しい感覚をさらに融合させ、「令和6年度の高千穂中学校スタイル」をともにつくり上げていきましょう。そして、高千穂中学校の一員として、気概をもって、自らを誇れる人となってください。

 改めまして、保護者の皆さま、本日は、お子様のご入学、誠におめでとうございます。わたくしたち教職員は、お子様の限りない可能性を大切にはぐくみながら、保護者の皆さまとしっかり連携し、地域の方々とともに、「高千穂の宝」であるお子様の力を最大限に伸ばすよう、精一杯努力してまいります。何卒、皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

結びに、本校の教育に多大な御支援・御協力をいただいております御来賓の皆さまに、感謝申し上げますとともに、新入生77名の健やかな成長と活躍を願い、式辞といたします。 

    令和6年4月9日

高千穂町立高千穂中学校  第31代校長 金丸 智弘

【校長室】令和6年度第1学期始業式 校長挨拶

 皆さんおはようございます。いよいよ今日から新年度が始まりました。この一学期の始業にあたり、皆さんに「めざす生徒像」を紹介します。

 このめざす生徒像というのは、皆さんに“こういう生徒になってほしいという「願い」、または「目標」のことであります。

高千穂中学校のめざす生徒像は、

① 多様性を理解し、自他を認め、思いやりをもって接する生徒

② 主体的に行動し、志(ゆめ)叶うまで挑戦する生徒

③ GLOCAL精神をもち、ふるさとを大切にする生徒

以上の三つです。

 この具体的な意味は、入学式でお話ししますので、それまで、皆さんなりによく考えてみてください。

 さて、コロナが沈静化し、私たちの生活様式において、様々なことに変化がもたらされていますが、新しい学年が始まります。皆さんはどのような目標を立てましたか?人それぞれでしょうが、「昔はどうだったかな」と過去を振り返りながら、今をどう変えるかということも大切ですが、“未来を見据えて変化し続けることも、さらに大切なことだと思っています。と言いますのも、皆さんはこんな話を聞いたことがありますか。

 ある国で、村人たちが村を行き来しながら暮らしていました。他の村から来た旅人が、村の入り口にいる門番に、「ここはどんな村ですか」と尋ねると、門番は「あなたが今までいた村はどんな村でしたか。」と聞き返します。旅人が「私の村は、ひどい村でした」と答えました。すると門番は、「ここもたぶん同じような村ですよ」と答えました。また、別の旅人が「ここはどんな所ですか」と聞きました。門番は、同じように旅人に聞き返したところ、その旅人は「私がいた所は、とても素敵な所でした」と答えました。門番は「ここもたぶん同じような所だと思います」と答えました。

 これだけの話なんですが、結局これからどのような村にしていくか、どんな所になっていくのか。これまでの過去とこれからの未来を、「今」とういうこの瞬間をどう繋ぐのかということであり、その節目が 「今」 であるということです。自分がどんな志(ゆめ)をもち、自分はどうありたいか。周りや他人とどう接していくか。皆さんが、自分ではっきりとした未来を想像すればするほど、やる気が引き起こされることが、心理学でも証明されています。未来を想像することで、目標に向かうモチベーションがより高まるということです。

 さきほど、3名の代表の生徒が、話をしてくれました。まず、新2年生代表の生徒は、「まわりには尊敬できる人がたくさんいる。そういう人たちのおかげで、学級が成り立っている」ことに感謝していました。次に、新3年生代表の生徒は、受験勉強を頑張ることを宣言しました。また新入生に対し、「この先輩についていきたい」と思われるようになりたいと最上級生としての思いを述べてくれました。そして、最後に生徒会代表の役員は、高千穂中学校をよくするために必要なこととして、学習態度とSNS3カ条、主体的に行動することの3つを掲げてくれました。代表の皆さんの新たな決意が感じられる発表だったと思います。

 最後になりますが、本日、皆さんは進級します。おめでとうございます。3年生は1年後どういった進路に進んでいるのか。そのための努力をしっかりとしてください。自分の進路は自分で切り開いていくことです。また、勉強だけではありません。卒業生から繋がれた高千穂中学校の「伝統を力に」どんな歴史をつくっていくのか期待しています。2年生は後輩ができます。後輩にとって模範となるようにしてください。そのために大切なことは、少しずつでも良いので自分自身が「成長していくこと」、そして、新たなことを「学ぶことから逃げない」ということです。学校は様々なことを「学ぶ」場所です。志を高くもって「学ぶ」ことを続けてください。学ぶということは自分が成長という変化を得ることです。志に近づいていくということです。来年、この一年間を振り返ったときに、今の皆さん自身と比べての成長を実感してくれることを期待しています。

令和6年4月5日(金)

【校長室】最終章

 校長としての一年間が過ぎた。2学期くらいからであろうか、校長としての日常にも慣れ、落ち着いて職務を果たす日が続いた。立場上様々な人との出会いがあり、挨拶を交わす機会も増えた。年度初めにコロナ感染症が五類に移行し、徐々にマスクを外す人が目立ちはじめた。人間の脳は優れており、目元だけで、マスクの下に隠れている鼻や口の形等を想像し、勝手に相手の顔立ちを作り上げてしまう。その結果、マスクを取ると別人と判断してしまうことも多々あり、地域で会っても素通りしてしまうことも少なからずあった。そのため、およそ2倍の人を覚える必要があり、正直苦労した。さすがに最近では、顔も名前もずいぶん覚えることができ、当たり前のように日常会話をすることができるようになった。

 さて、卒業式、異動内示、県立高校入試合格発表、修了式、校内人事、離任式等々、この年度末は予想以上の慌ただしい日々が続き、気持ちの整理がつかぬまま、令和6年度を迎えた。8名の教職員をお送りし、新たに7名の方々をお迎えした。全国的な少子高齢化減少は、この高千穂町にも大きな影響を与え、生徒数の減少や私立中学校への転出のあおりを受け、学級数は変わらないものの、教職員数は令和5年度より減ってしまい、先生方は負担増となってしまった。私は今年度で役職定年となる。人生の節目、セカンドライフをどう楽しむか。やりたいことがあり、夢を描くだけでワクワクするが、まずは最終年度、校長としての責任を果たすべく、教職員一同、現実を真摯に受け止め、気持ちを切り替えて、みんなで力を合わせて学校運営に取り組んでいきたい。幸運にも、本町の小中学校6校の校長先生方は全員留任である。心強い同士とともに令和6年度を乗り切っていく所存である。

第31代校長 金丸智弘