2025年3月の記事一覧
【校長室】惜別
校長職が終わろうとしている。およそ2年前、本校に赴任したときの衝撃は今でも忘れない。4月早々、物珍しそうに自分を見つめる生徒が、元気よく挨拶する光景はどの学校でもよくある。しかし、玄関の床に膝をつけ、タイルのくぼみの跡が膝に残るほど、せっせと雑巾をかける生徒はあまり見たことがなかった。しかもこういう生徒を校内の至る所で見かけたのである。先生方のご指導に感謝すると同時に、その指導をしっかりと受け止め、行動に移す生徒たちが輝いて見えた。これほどの学校があるとは思いもしなかった。それから一緒に学校生活を送るほど、生徒の良さがさらににじみ出てきた。男女とも仲良く、グループ分けや班編成で性差を考慮する必要もない。地域の方々から「高千穂の宝」として、大切に育てられ、生徒は健やかに育っている。僻地校の小規模校ならまだしも、各学年70~80名の全校生徒240名の在籍数の学校において、これほど落ち着いている学校がどれほど存在するであろうか。それほどこの2年間が充実していた。
定期異動が新聞で報道されると、これまでお世話になった方や諸先輩の先生方からたくさんのお電話をいただいた。午前4時20分のメールは数校前まで赴任していた学校のPTA会長からであった。「引っ越し手伝い行きますよ」と。
民間企業の経営資源は、人、物、金、情報、、時間、知的財産と言われる。様々な教育課題を抱える学校の現場では、教師によってその教育効果はいくらでも変動する。経営資源の筆頭にあげられる「人」次第であるということである。だから私は、人材育成により力を注いできた(つもりである)。そういう意味で人と接してきた。
現場一筋で生きていこうと考えていた私は当然、それほど人脈があるわけでもないが、ある出来事がきっかけで管理職になった。たった5年であったが、その間多くの仲間が管理職になり、第一線で活躍している。今年度本校から移動する先生の新たな赴任校には、その仲間がいる学校もある。また、私が今度勤める学校には私の初任校で、27年前まで3年間勤めた。当時の教え子は40歳半ばとなり、中学生の子供がいる年代であり、さっそく、「娘の担任をしてほしい」との連絡があった。縁を感じる。これまで教員としてやって生きたことに間違いはないと確信できる。人生の伏線回収が始まったと感じる。
次の仕事内容は、初任者の指導を担当する拠点校指導教員である。計画書や報告書は何度も見ており、決裁もしてきた。しかし、実際にその担当ともなり、手引き書を見てみると勉強をし直す部分もたくさんある。一から勉強のやり直しである。まさに「人生常に60点、学びなくして成長あらず、志叶うまで挑戦」である。
一昔前までは60歳で、定年退職。今では役職定年も選択できる。私を必要とする学校がある以上、もう少し頑張ってみようと思う。高千穂の皆さんお世話になりました。
【校長室】第78回卒業式校長式辞
式辞
厳しい冬の寒さが続く中にも、確かな春の息吹が感じられる今日の佳き日、栄えある卒業証書を授与いたしました67名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日の日を待ち望んでおられた保護者やご家族の皆様におかれましては、慈しみ、大切に育ててこられたお子様の、立派に成長された姿に感慨もひとしおのことと拝察いたします。義務教育9年間もの長きにわたり、お子様の修学を支え、励ましてこられたことに、深く敬意を表しますとともに、本校教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
また、公私ともにご多用の中、高千穂副町長 藤本昭人(ふじもとあきと)様、高千穂町教育委員会 教育委員佐藤幸男(さとうゆきお)様をはじめ、本校ゆかりのご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに第78回卒業式を盛大に挙行できますことは、この上ない喜びであります。卒業生の門出に花を添え、お祝いいただき、高いところからではございますが、衷心より感謝申し上げます。
卒業生の皆さんは、これまで学習や学校行事、生徒会活動、部活動等に熱心に取り組んできました。3名の3年生が力走し、見事優勝を果たした宮崎県中学校新人女子駅伝。宮崎県ワールドアスリート2名が所属する女子バレー部は、宮崎県と鹿児島県の対抗戦で、5位に入賞する活躍をみせました。体育大会では、各団長がオリジナルに富んだパフォーマンスを披露し、紅葉祭では、合唱で3年生らしい美しいハーモニーを聴かせてくれました。高千穂町の観光名所を紹介したオリジナルの学年劇では観客を魅了しました。高千穂プロジェクトでは、「高千穂に貢献しよう」というテーマで、高千穂町が抱える課題を一つでも解決しようと多くのアイデアを発表しました。様々な場面における皆さんの大活躍に、無限の可能性を何度も感じました。もちろん、必ずしも順風満帆な日ばかりではなかったと思います。時には悩み、時には苦しみながらも、くじけることなく過ごしてきた3年間のさまざまな思い出は、皆さんの心にしっかりと刻まれていることでしょう。
そういう皆さんは、私が校長として送り出す最後の卒業生であります。私はこの1年、教師生活30年を振り返りながら、皆さんと共に学校生活を送ってきましたが、皆さんの活躍や成長は何よりの楽しみでありました。最高学年として、多くの実績と感動を残してくれた皆さんは、私にとって「一生の宝物」であります。皆さんが残してくれたものは、後方に控える後輩たちが校訓である「伝統の力」として、さらに高千穂中学校の発展に邁進してくれると信じています。
さて、皆さんがこれから迎える未来は、デジタル化、IT化など、産業技術の著しい発展、そして多様な価値観が溢れる時代であります。そのような社会を背景に、本日、夢や希望に胸を膨らませ、決意を新たに羽ばたいていく皆さんに、二つのことについて話をさせていただきます。
一つ目は、「人間力」を高めてほしいということです。創造性、コミュニケーション能力、公共心、相互啓発力、柔軟性など、「人間力」には様々な要素が含まれます。変化の激しい昨今、世界の情勢や経済は不安定を極めています。今日(きょう)までの正解が、明日には不正解となることさえある時代の中で、その都度新しい答えを生み出すことが求められています。また、人種、国籍、性別、文化といった、異なる価値観が混在する多様性の中で生きていく時代であります。より多くの人と良好な対人関係を構築し、互いの知識や技術を共有しながら、共に課題を解決していく力が必要です。「人間力」の高い人は、相手の立場や文化に配慮し、柔軟かつ適切な対応をとることができます。これは人間ならではの能力です。これからの社会を生き抜いていくためには、この「人間力」が必ず力を発揮します。
二つ目は、人から大切にされる存在から「人を大切にする存在」になってほしいということです。さんは、これまで「高千穂の宝」として、大切に育てられてきました。大切に育てられ、また、他者を大切にする優しさのある皆さんの存在は確かな意味があり、誰かにとって価値ある存在に間違いありません。これから、ますますAIの技術が進歩するでしょうが、人間だからこそ、もち合わせているもの、その一つがこの「人を大切にする」という優しさです。相手が何を感じているのかを感じ、理解するとともに、その相手に対して、自分はどうするべきなのか、どうあるべきなのかを考え、主体的に行動することができる力です。周囲に流されることなく、「人を大切にする」ということを軸として判断し、行動してください。人を大切にするということは、問題解決の手段にもなり得るからです。
けれど、時にはつい、いやな感情を抱いたり、他者と衝突したりすることもあるでしょう。でも大丈夫です。100%完全な人はいません。振り返り、改善点があれば直していけばいいのです。今年1月、アジア人として初めてアメリカの野球殿堂入りを果たしたイチロー氏は、満票選出ではなかったことに対して、直後の会見で、次のようことを話されました。「1票足りないというのはすごくよかったと思います。いろんなことが足りない、人って。それを自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思うんですよね。不完全であるというのはいいなって。生きていく上で、不完全だから進もうとできるわけで、そういうことを改めて考えさせられる。見つめ合える。そこに向き合えるというのはよかったなと思います。」と。
保護者の皆様、3年間本校の教育活動に対し、ご理解と温かいご支援、ご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。お子様は、本校での学校生活を経て、心身ともにたくましく成長されました。これからも、お子様の輝ける前途を温かく見守っていただき、時には励まし、支えてくださいますよう、心から願っております。
私事ではございますが、教職生活の集大成を、校長として2年間高千穂中学校で過ごせましたこと、皆さんとの出会い、学び会えたことは、私の人生にとってかけがえのない時間でありました。この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。
この高千穂の地は、まもなく桜やおがたまの花が咲き、命の躍動する新たな季節を迎えます。卒業生の皆さん、皆さんの「存在」そのものが、周囲に勇気と希望を与えることがあるということを決して忘れないでください。そして、自信と誇りをもち、さらなる高みを目指して学び続けてください。必ず巡る自然の強さに思いをはせつつ、力強くこの学び舎を巣立つ皆さんの限りない前途に幸多からんことを祈念いたしますとともに、夢あふれる未来を祝福して、式辞といたします。
高千穂町立高千穂中学校 第31代校長 金丸智弘
【校長室】噛み噛み王子
今年度の卒業式は3月17日(月)に実施する。本日、その予行練習を行った。これまで、3年生はもちろん、2,3年生の代表も動きや所作など、何度も何度も練習を重ねてきた。もともと集団行動がしっかりとできる素直な生徒たちなので、練習にもそれほど時間を費やさない。本日の予行もそれなりに及第点を出す内容であった。ただ、人間は欲深いもので、目標をある程度達成するとさらに高い目標をかかげ、新たな努力を始める傾向が強い。一通りの予行練習が終了すると、予想どおり主幹教諭が全職員を体育館前方に集め、気になる点の確認を始める。私は満足しているのに、「これでもか」とさらなる完成度を求めて意見が飛び交う。先生方は、まだ満足していない。燃え上がる炎のような目をしていた。「あっ、熱い」。起立・着席のタイミング、礼の揃え方、歌のハーモニー、代表者の歩行速度、返礼等、次から次に出てくる課題。「今から大丈夫か・・・」という私の不安をよそに再度練習が始まる。素晴らしいのはそれらの課題を2~3回の練習でクリアするところである。当日は素晴らしい卒業式になること間違いないと確信した。
その後、3年生の修了証授与式を行い、各種表彰へと進んだ。対象生徒が多かったものの、事前に担当職員ともしっかり打ち合わせていたので、安心していた。決して油断ではなく、万全の状態で臨んだということである。が、それは「つもり」であった。実際に表彰に入ると、噛むこと数えきれず。もちろん、読み上げる練習は何度も何度も繰り返し行った。見た目とは違って、用心深い私は準備に余念がない。それには自信がある。にもかかわらず、噛む噛む。場内にどよめきが走るのではと思いきや、えらいのは全校生徒。私が噛んでも笑わない。何度噛んでも騒がない。ざわつかない。そういう態度だからこそ、なおさら申し訳ないという思いで、目の前の生徒を見ると、全身緊張状態。真っ赤な顔で直立不動。「生徒がこんなに頑張っているのに」「や、やばい」「これじゃいかん」と自分に言い聞かせ、気を取り直そうと試みるものの、状態は好転しない。これでもかと噛む噛む噛む噛む。「はにかみ王子」ならぬ「噛み噛み王子」(王子という年でもないが)状態とは、まさにこのこと。先生方を不安にさせてしまったかもしれない。でも、安心してほしい。これだけ噛めば、卒業式本番で噛むことはないだろうと、悠長にポジティヴシンキングができるのも私である。
当日、気温は若干低くなるものの、土日の雨も曇りにまで回復しそうである。式の準備も順調に進んでいる。今、午後3時を回った。午前中の悪夢がじわ~っとよみがえってきた。「よしっ」と、卒業証書授与と式辞の練習に取りかかる私であった。
令和7年度グランドデザイン
令和7年度生徒会スローガン
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〇 荒天時に関するお願い
大雨や台風、大雪その他様々な事象により生徒の身の危険があると判断される場合は、たとえ休校などの措置連絡がなくても、無理に登校させたりすることのないようにお願いいたします。学校との連絡が通じる時間帯に、連絡していただければ柔軟に対応していきますのでご理解ください。まず、お子様の身の安全を確保することを最優先した対応をよろしくお願いいたします。
【地震発生時の登下校マニュアル】
◎ 南海トラフ地震の発生が心配される中、本マニュアルをもとに各学級でどのように行動すればよいのか。各家庭での決まりや約束などを決めておくことなどを確認しました。各家庭におかれましても、万が一の場合にどのようにすればよいのかを話し合ったり、決めたりする機会にしてもらいたいと思っています。なお、本マニュアル(データ)は、マチコミメールで送付いたしますので、ご確認ください。