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心の声

【校長室】地域資源ブランド

中山間地域で生活する子供たちは、素直で愛想がよい。授業態度がよく、非行等問題行動もほとんどないとよく言われる。へき地校が多く、児童・生徒数が少ないのもその要因の一つであろうが、本校は234名の生徒が在籍しており、小規模校ではない。それでも集団行動がしっかりでき、集会活動を見るたびに、見事なものだと感心する。これまでの教職員生活を振り返るといわゆる生徒指導困難校での勤務が多くを占めていたからか、現在は、毎日の学校生活が充実し、身体的・精神的・社会的に安らぎ、すごく幸せである。生徒の保護者や祖父母は本校出身の方々が多く、「生徒のために」と協力を惜しむことがなく、それが強みでもある。地域の教育力も高く、“高千穂の宝”として、様々な場面で生徒を支えてくださっている。

本校の校舎は特別教室棟が昭和39年に、普通教室等が昭和53年に建築され建物や設備の老朽化が進んでいる。また、現在の学校用地が急傾斜地特別警戒内にあることから、数年後に本町の温泉跡地に移転することが決まっている。そこは、将来的には九州中央自動車道の整備が計画されている近くで、自然災害時の物流関係のライフライン確保が可能である等、立地条件がよい。もちろん、移転に必要な費用も高額になる。したがって、移転を控えている現在、校舎等に関する修繕費等が抑えられるのは無理ないことである。しかし、今年度熱中症対策として新たにエアコン4台が設置された。費用の捻出も大変だったのではないか。「校長に無断で設置を決定して申し訳なかった・・・」とさえ言われたが、いえいえ、何とありがたいことか。8月末の奉仕作業の際、生徒に報告すると歓声が上がった。夏の暑い時期、子供たちにとって、特別教室で授業を受けることはさぞ辛かったことであろう。家庭で不満を口にすることがあったかもしれないが、学校で耳にすることはなかった。それだけ辛抱強いことも誇らしい一面であるが、これまでそういう健康面での配慮を行えなかったことは、校長として深く反省すべき点である。

このように、人的環境の面でかなり恵まれている本地域は、「GIAHS(世界農業遺産)」や「祖母・傾・大崩ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)」に認定されており、資源が豊富で、地域とともに学習する環境も整っている。令和5年に策定された「宮崎県教育振興基本計画」(本県の教育、文化・スポーツに関する最も基本となる計画)には7つの基本目標がある。その基本目標3「ふるさとへの誇りと愛着を持ち、世界を視野に活躍する活躍する人材の育成」の施策8は「社会の変化に対応した多様な人材を育む教育の推進」である。その施策の内容の中に「持続可能な開発のための教育(ESD)の推進がある。昨年度から国土交通省主催宮崎大学主導の「流域治水学習」に参加し、今年度は国指定で「循環型社会を実現する環境教育」にも取り組む。2015年にGIAHSの認定を受け、9年が経つ本地区。世界レベルで評価された生活様式が地域にとっては日常的な活動で、「当たり前」となっている。本町ではこの現状を踏まえ、小・中学校で実施している地域学習をGIAHSの視点から整理し、高千穂GLOCAL(グローカル)として、地域の財産への理解と地域への誇りが醸成されていくよう、取り組んでいる。2030年までに達成すべき17の目標。これは持続可能なよりよい世界を目指す国際目標である。2030年は、令和12年。現生徒は20歳前後で、社会人として働いている生徒がいるであろう。SDGs17の目標のうち、直に触れることのできる項目が高千穂町にはある。県教委や県森林組合主催の事業についても多数の案内をいただいている。校長として、生徒の学びを軸にして、この貴重な地域資源ブランドを学校教育に生かし、学校という学びの場を大切にしながら学校経営に携わっていきたい。

【校長室】必然

8月31日(土)に本町の五ヶ所三秀台の平和祈念碑前で、「第28回五ヶ所平和祈念祭」が開催された。第二次世界大戦敗戦後の昭和20年8月30日、熊本県の捕虜収容所へ救援物資を空輸中のB29が高千穂町五ヶ所の祖母山に墜落した。このときの搭乗員12名と時を同じくして、終戦直前に同町に墜落死した日本軍戦闘機のパイロット1名を慰霊するために、平成7年に地元有志の平和祈念碑奉賛会が町当局の協力を得て「平和祈念碑」を建立し、毎年平和祈念祭を開いているとのことである。そもそも、この事故の事実を知ったのは、本校で実施した平和学習の講話である。沖縄から高千穂町への学童疎開に関する話の中で、墜落のことにも触れられ、この平和祈念祭と繋がったのである。祈年祭当日は、命を落とした計13名の冥福を祈り、参加者全員による黙祷と五ヶ所在住の小中学生による13回の献鐘が行われ、その後参加者による献花と続いた。その日は台風一過で、雲一つない晴天に恵まれたが、献花が始まると突然強風が吹き始め、それは献花が終わるまで続いた。祈念碑前の机上に捧げられた花は、幾度となく風で飛ばされそうになったが、献花が終わると同時に風は止み、穏やかになった。“私たちの世界に起こる現象は、現実的な影響だけでなく、目に見えない(スピリチュアル)の影響も必ず受けている”と聞いたことがあるが、それだったのであろうか。「神々が天上界から地上に降り立った天孫降臨の地」高千穂に住むと神社への参拝の機会が多く、急に吹く風を感じることがよくあるが、その風はさわやかで気持ちがよい。この時の風も強風ではあるものの、決していやなものではなく、むしろ心地よかった。

さて、献花では、上野にある玄武山正念寺の副住職による読経と法話があった。この正念寺は、昭和19年に沖縄県豊見城村第一国民学校から、学童疎開として上野村に到着した学童75名のおよそ半数(残りの半数は学校)が生活したところとのこと。およそ10分間の法話では、今生かされていることは「当たり前ではない」と話された。当時様々な理由で日本の戦争資料に記されていなかったこのB29墜落の事実。飛行機の残骸が地域の人にたまたま発見されたことから、この事実が明らかになったこと。この発見がなければ命を落とした方々の遺族は、詳細を知ることがなかったこと(祈年祭参加の西部方面総監部在日米陸軍連絡将校のあいさつによる)等、この発見は当たり前ではない。偶然ではなく、必然だったのではということである。1+1は「2」。我々にとってはこれが当たり前であるが、今は1+1は「鬼」(ちなみに2+2は「4」ではなく「カニ」らしいが・・・)とも言うらしい。

多種多様な考え方を受け入れることが大切と言われる共生社会。ほんとうにいい教師は、相手を選ばず、生徒の話に十分耳を傾け、その気持ちに寄り添うことができる人。不登校やいじめにあった生徒、性的少数者等の少数派の視点に立ち、寄り添い守ることができる人。若い教員の「今どきの感覚」をばかにするのではなく、耳を傾けて学校全体の教育活動に取り入れる人等である。日常生活の中で出合う様々な出来事は当たり前ではない。だからこそ、どのようなことでも自分の価値観にとらわれることなく、一つ一つを大切にするという意識が必要だと感じさせられた。

最後に、本校壷田つくしさんによる追悼作文を紹介する。

「あの翼に乗せて」

今日も誰かがどこかでいじめられて、明日もどこかで誰かが泣くでしょう。日本では戦後79年の時が過ぎ、この平和の鐘の音色も天高く響いています。平和というものがふと当たり前にあると錯覚してしまいますが、それは私たち一人一人の優しさや思いやりからつくりあげるもの、隣の友達が困っていたら声をかける勇気から始まるのではないでしょうか。私にはどうしたら戦争がなくなって、哀しむ人がいなくなるかはわかりません。詩人の宮沢賢治は「私の幸せは世界中の皆んなが幸せにならなければ有りません」と言いました。その言葉を借りるなら「私の幸せは隣の友達が笑っていなければ有りません」と言いたいです。世界のみんなが、隣にいる友達を笑顔にできたら、いつか本当の平和がくるのではないでしょうか。79年前の夏、奇しくも目の前に広がる山々に、アメリカと日本の飛行機が墜落して、合わせて13名の尊い命が失われました。亡くなられた若い方々は戦争が終わったらどんなことをしたかったのでしょうか。きっと、まず無事を伝える笑顔をお土産に、家族や恋人の元に帰りたかったのではないでしょうか。

あの夏墜落してしまった翼に、もう一度笑顔を乗せて世界に飛び立ちましょう。

 

追伸 アメリカ合衆国と日本両国の国家及び合唱を聴かせてくださった「大いちょう歌劇団」の皆様、すばらしい歌声をありがとうございました。

【校長室】2学期始業の日

始業式校長挨拶

「皆さんの夏休みはいかがでしたか。県中体連の大会から始まり、パリオリンピックでの日本選手の活躍等で多くの感動を得ることができました。その一方で、地震も発生しました。日本全国では、水の事故に限らず、大雨や突風、落雷、台風などの自然災害による被害のニュースもたくさん舞い込んできました。被害を受けられた方々へのお見舞いを申し上げます。

さて、生徒の皆さんにおいては事故の報告を受けておりませんので、一安心をしているところです。この2学期は行事がたくさん計画されています。校長先生は皆さんが無限の可能性を発揮してくれることを楽しみにしています。失敗を恐れることなく、自信をもって様々な教育活動に取り組んでほしいと思います。また、来年4月には上野中が統合されます。その統合の準備として、上野中の生徒と多くの交流を予定していますので、積極的に交流を深めてください。なお、3年生については、受験が近づいてきます。皆さんの将来の目標をしっっかり見据えて、取り組んでほしいと思います。昨日の奉仕作業で、学校はとてもきれいになりました。特別教室にも地域の方々のご協力のおかげで、エアコンも設置されます。台風10号が近づいており心配していますが、いかなる場合でも想定外を想定した行動をとり、命を守る行動を優先してください。以上で校長先生の話を終わります。」

【校長室】1学期終業式 

さっそくですが、背筋をピンと伸ばして、静かに目を閉じてください。

そして、1学期の自分について、ちょっと振り返ってみてください。

はい、それでは、目を開けてください。

先ほど、各学年の代表の皆さんが1学期を振り返ってくれました。

1年生代表生徒は、教科担任制や体育大会、期末テストなどを「初めてづくしの1学期」として振り返り、明日からの夏休みを「変化できる大切な休み」と位置付けていました。

2年生代表生徒は、体育大会で高めた団結力、修学旅行で学んだ公共マナーのこと、そして、主体性をもっと理解し、自分たちで気付き、行動することを意識したいと言っていました。

3年生代表生徒は、1学期の学級委員長での苦労をクラスメイトと協力して乗り越えたこと、そしてこれから見通しをもって行動することで有意義な生活を送ると決意を述べてくれました。

そして、最後に生徒会代表生徒は、集会時での集団行動や話の聞き方について改善を呼びかけるとともに、SNSの利用について問題提起をしてくれました。皆さん、苦労や失敗を繰り返しながら、新たな目標を立て、行動していこうという意欲的な気持ちが十分伝わってきました。みなさんもおそらく同じような振り返りができたのではないかなと思います。

校長先生は「失敗は成功の近道」と思ってますので、あえて失敗できる機会をたくさんつくっていただくよう、先生方にお願いしています。ですから、皆さんはいくつか失敗経験をしてきたと思います。

例えば、校則検討委員会で校則について自分たちであるべき姿を考え、実践してきました。頭髪に関する細かな規則も撤廃しましたね。そして、今年、眼科検診が実施された際に、お医者さんから、前髪の長さに関する指摘を受けました。健康面での根拠がしっかりと示されました。これについては、養護教諭の先生からも放送で話があったと思います。その後、皆さんは改善できたでしょうか?今、ちょっと確認してみてください。前髪とかは目に入っていませんか?

それから、生徒総会の時、校長先生は集団行動について注意をしましたが、その後どうですか?先生が見るには、まだ満足はしていませんが、かなりよくなったと思います。

皆さんのよいところは、指導されたことに対して、聞く耳をもっているということ。そして、改善することができるということです。できれば、そういう問題点に皆さんが自ら気付き、考え、判断し、改善するという行動をしてほしかったなと思います。それが、いわゆる主体性であり、その主体性を身に付けることこそが大人への第一歩だからです。

ところで、「スクラップアンドビルド」という言葉がありますが、耳にしたことはありますか?

「スクラップ」は、解体するとか廃棄する、処分するという意味です。「ビルド」とは、組み立てる。製造するという意味があります。そして、「スクラップアンドビルド」という意味は、企業、会社でよく使用される言葉ですが、例えば、利益の出ていない部門を整理して、新たな部門を設けたり、建物を改築したり、設備を置き換えたりすることで利益の向上を図るということです。

皆さんに言い換えれば、自分で考え、判断し、行動したことが間違いだと指摘を受けた場合、考え直し、改善しながら、少しずつ成長していくことだと言えます。夏休みはそういうことを考えるにはちょうどよいかも知れません。

最後になりますが、校長先生も1学期を振り返ってみました。たくさんのすばらしい出来事がありましたが、その中でも特に印象に残っていることがあります。それは、本校の生徒が、人一人の命を救う行動をしたということです。本人の希望により、これ以上詳しいことは言えませんが、勇気ある、模範的な行動だなと本当に感心しています。

明日から、37日間の夏休みに入ります。気を付けてほしいことは、命を含めて健康管理です。水の事故、交通事故、熱中症、そしてコロナ感染者も増えてきていますが、どういう場面でも「想定外を想定」しながら、生活すれば、皆さんのことですから、安全・安心な夏休みを過ごすことができると思います。2学期の始業の日に、全員が元気な顔を見せてください。

【校長室】支え

第75回県中学総体が開催されている。おかげさまで、本校は学校部活動や社会体育を合わせて14競技に出場している。地区予選での団体優勝も7本と近年ではまれにみる好成績であったが、県大会では、厳しい現実を経験する結果が続いている。

九州のほぼ中央部に位置する高千穂中が、県大会に出場するともなると、なかなか大変な面もある。移動する距離は、場所によっては修学旅行(今年度までは九州北部が行程であった)の訪問先よりも遠くなることもある。それでも、保護者は「子供のために・・・」と配車や宿泊先の手配、応援等々、一生懸命してくださっている。「高千穂の宝」と言われる純粋な子供たちは、その感謝の気持ちを忘れない。だから、さらにやる気を伸ばす。その子供の姿が保護者にとっても頑張れる糧となる。

応援席を譲ってくれた他チームの生徒を日陰の応援席に誘導していた保護者。中学生という同じ世代の子供を育てている親の一人として、どの子供にも分け隔てなく優しく接する心の広さに、人としての大きさを感じた。そういう姿が子供たちをさらに成長させる。見習いたいものである。

別の競技で、今年度県北部でも上位に位置する部がある。県大会でも活躍が期待されたが、初戦の相手は南部の強豪チーム。レベルの違いを見せつけられ、結果は完敗であったが、試合終了の笛が鳴るまで、ずっとボールを追いかけていた。点差が広がっても、試合を捨てず最後までプレイに集中していた。素敵な子供たちである。応援していた保護者たちも目をそらさず、頑張る子供たちを見守られていた。その姿は子供たちと一緒になって戦っているようにさえ見えた。“この親にしてこの子あり”。まさにそう感じた光景である。

競技によっては、天候に左右され、延期を余儀なくされる。実際に、延期が続き、試合ができていない部活動がある。予定よりも一週間遅れの実施となるであろう。モチベーションを維持するのも容易なことではない。それでも、ピークを維持するべく、日々の練習に励み、大飛球の一撃。部室の窓ガラスは木っ端みじん。もちろん、子供に責任はない。むしろ、好調を維持していることに喜びさえ感じる。そのグラウンドを軽トラで整備されている方がおられた。おそらく、保護者の一人であろう。その日は、リフレッシュデイで部活動は中止だったため、その合間のことと思われる。このような陰での支えは子供たちの力になる。熱中症を考えると長時間の練習は危険であり、子供たちが練習だけに集中できる環境は非常にありがたい。チームの勝利には、このような保護者の貢献も欠かせないものである。

今週末から来週にかけて、バレー男女、野球、陸上、バスケット男女、バドミントン競技が実施される。日々の厳しい練習を通して、自らを高め、予選を勝ち抜いた子供たちである。このように応援してくださっている保護者への感謝の気持ちを忘れることは決してないであろう。

中には、3年後に本県で開催される2027年の「紡ぐ感動 神話となれ 日本のひなた 宮崎国スポ 障スポ」の選手となる子供がいるかもしれない。これまでの練習の成果を存分に発揮し、悔いが残らないよう、全力プレイで熱戦を繰り広げてほしいと切に願う。私も可能な限り、応援に行きたい。また、慌ただしい週末が始まると思うと、ただただうれしい限りである。