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心の声

【校長室】裏方

2月16日(日)の午後、高千穂神社の神楽殿において、「お披露目かるた大会」が開催された。これまで高千穂町にまつわる「かるた」がいくつか作成されてきたらしい。今回は高千穂町役場総合政策課が主催となり、地域の小・中・高校生や一般の方々等に公募し作成された。計画は数年前からあったようだが、実質的な作成委員会が立ち上がって、1年ほどで完成した「高千穂いいっちゃがかるた」。主催者の熱い思いや地域住民の郷土愛の高さにただ驚くばかりである。この「お披露目かるた大会」に先立ち、絵札や読み句の採用者への表彰が行わ、本校からは、絵札の部で4名、読み句の部で13名が表彰された。上位優秀作品には副賞として、高千穂町の商品券や高千穂牛の引換券等もあり、紹介と同時に歓声が沸き上がった。同かるたに採用されたことは、まさに栄誉なことであり、受賞者の皆さんが、満面の笑みを浮かべていたのがとても印象的であった。

この大会には、本校から、選手として1年1名、2年5名、3年5名の計11名が参加した。予め振り分けられた1チーム3名による団体戦で、中には小学生低学年の児童も参加しており、保護者の撮影合戦が白熱していたことは言うまでもない。初戦こそ、遠慮がちであった本校生徒も、2回戦あたりから本気モードに変わり、社会人はもちろん、小学生相手にも遠慮無く「はい」、「はい」、「はい~」と容赦の無い戦いを挑んだ。しかし、小学生の勢いはとどまることを知らず、中学生たちは完膚なき敗北を喫した。

ところで、選手以外にも、運営・審判、読み手等、7名の生徒がスタッフとしてボランティアで参加し、裏方として大会を支えた。生徒会役員、部活動生、放送委員、3年生(進学内定生徒)等、多種多様な生徒たち。学年や組織など関係なく、みんなが分け隔て無く仲がよいのも本校生徒の特徴である。この「裏方」とは、「芝居で、舞台の裏側で働く人。大道具・小道具・衣装・音響・照明などの係、伝統芸能での囃子方(はやしかた)などのこと。」また、「表に立たず、陰で実質的な仕事を引き受け、すすめる人。」のこと(コトバンク、デジタル大辞泉より)を言う。表舞台の選手が快く競技できるよう、裏方として、決して目立つことなく、運営に全力を注ぐ。選手だけでなく、進行係との確認、勝敗判定、会場内の応援者への対応等、あらゆることに神経を研ぎ澄ます。自分は目立たず、縁の下の力持ちとして尽力したおかげで、選手の皆さんは心置きなく、競技に集中できていた。大会そのものが第1回目ということもあり、ぶっつけ本番的なことや中には緊急対応を依頼されることもあったらしい。本校前生徒会長もその一人であるが、開始直前に依頼された業務も無難にその任務を果たした。運営そのものに多少のバタバタ感があったが、みんなで補い合いながら、手づくり感溢れる大会となった。会場の皆さんは、厳粛すぎず余計な気を回さなくてよい分、心置きなく楽しむことができたのではないか。主催者の皆さんからは、「中学生がよく働いてくれている。」と。生徒の小学生時代を知る校長先生からは、「子供が成長している。」等という言葉を聞くことができ、校長としてとてもうれしい気持ちになり、生徒を誇らしく思う。

高千穂郷土かるた協会の皆様、作成に携わられたすべての関係者の皆様、すばらしい「高千穂いいっちゃがかるた」の完成、誠におめでとうございます。そして、お疲れ様でした。

【校長室】CRISIS MANAGEMENT

令和7年1月13日(月)21時19分頃、スマートフォンから、けたたましい音量で緊急地震速報が流された。日向灘を震源とするマグニチュード6.9(速報値)、震度5弱の地震が発生したというものであった。宮崎市の自宅にいる妻と実家にいる両親に連絡をし、無事を確認。関東に住む3人の子供たちにもその旨連絡をした。昨年8月8日(木)16時42分頃に、発生したマグニチュード7.1(速報値)、震度6弱の地震は、授業日であれば、下校中の時間帯。夏休み期間中だったため、生徒への直接的な被害はなかったが、校長会で情報を共有し、登下校中に地震を含む自然災害に遭遇した場合の避難、いわゆる「命を守る行動」について、再確認と生徒への指導及び保護者への啓発を図った。

今回の地震では、海岸線付近で津波警報が出され、避難指示が出された地区もあった。翌日朝のニュースでは、高台に避難する方々の映像が映し出されていたが、避難所の開設が遅れ、高台の施設近くで右往左往する姿も見られた。それだけ、住民の避難が早かったと考えれば、「命を守る行動」がしっかりと身に付いてきたとも捉えることができ、危機意識の向上がなされているという喜ばしい現象でもある。

私の勤務する高千穂中学校は、中山間地域である。標高300m以上の地域にあるため、津波の心配はほぼ皆無に等しい。しかし、近年の自然災害では、中山間地域における土砂災害により、多くの人的被害が発生している。国が公表する土砂災害危険箇所はおよそ、52万箇所あるものの、防災施設の整備率は20%代と低い水準であると耳にする。本校の南西側は、観光で有名な高千穂峡のほぼ真上に位置しており、断崖絶壁のため、災害時に山をくだるという避難方法の選択肢はない。中山間地域は集落の多くが山腹斜面及び谷沿いにあり、土砂災害危険箇所に指定されている地域がほとんどであり、本校も例外ではない。

毎年、避難訓練を実施しながら、「本当にこれで良いのか」と不安があるのも事実である。災害時には孤立しやすい地域。避難後の集合場所は、現段階では、校庭ではなく、さらに高台の避難所へ避難するように共通理解を図っているものの、本当にそれでよいのか。というのも、高台へ移動するための県道への動線は2通り。しかもその県道には、4階建ての集合住宅が数棟建っている。地震発生時の初期対応訓練(揺れへの対応)での基本行動は、「どこにいても、どのような状況でも『上から物が落ちてこない』 『横から物が倒れてこない』『物が移動してこない』場所に素早く身を寄せて安全を確保し、揺れがおさまってから避難すること」が鉄則であるが、揺れが収まるまでの時間や高台への移動時にも危険が待ち構えているのである。東日本大震災の発生時、避難訓練度どおりに避難をしたものの、避難所近辺が危険であることを察知し、さらに高台へ避難をするという「想定外を想定」した結果、99.8の生存率を誇った「釜石の奇跡」。いったいどの避難方法が「命を守る行動」になるのか。地震発生時は、防災無線等の機器が使用不能になることも十分想定される。情報を受け取った人が順次行動に移していかなければ犠牲者は減らない。「釜石の奇跡」を起こすきっかけとなった岩手県釜石市鵜住居地区居住の皆さんは、地震発生後すぐに高台にある避難所に避難を始めたと聞く。避難の途中地域住民と協力しながら、小・中学校の児童・生徒にも声をかけながらひたすら高台へ避難したとのこと。

1月13日(月)の地震発生直後は、町役場の災害対策室から、何度も何度も「注意や命を守る行動をとるように」という放送がなされた。県内でも有数の高齢者の多い高千穂町であるからこそ、地域全体で「一人の犠牲者も出さないため」の行動がいかに大切か。全国各地で毎年頻発する大雨や地震災害を決して他人事とせず、いざという時のためにやはり訓練は必要である。テレビで災害地や避難所の様子を見たり聞いたりするだけでは本当の大変さは決してわかるものではない。教職員、生徒一人一人が、災害に対する緊張感を維持しながら、これからも「一人の犠牲者も出さない」危機管理に努めるために、再度地震発生時の避難方法等の見直しに取り組んでいるところである。

【校長室】SIN化

 

 2学期の終業式で話しました「慎独」。覚えてますか。皆さんが自分を律して規則正しい生活を送ってくれたおかげで、大きな事故もなく、令和7年を迎えられたことをとてもうれしく思います。

先ほど、各学年代表の皆さんが3学期の抱負を発表してくれました。1,2年生代表の抱負には、偶然にも「みんなをまとめる」という共通の目標がありました。自分のことだけでなく周囲のことにまで気にかけるという心の成長を感じます。3年生は、志望校全員合格という決意を述べてくれました。新たなステージに進むための覚悟があります。そして、生徒会からは、スローガン「SIN化~新しい一歩を踏み出そう~」について、様々な意味があること。そしてそれを達成するためには全校生徒の協力が必要不可欠だと発表してくれました。

この3学期は、3年生にとっては人生の大きな転機となる時期であります。そうです。受験です。ちなみに、全校生徒に伺いますが、皆さんは何のために勉強をしていますか。志望校に合格するためですか。もちろん、それも理由の一つでしょう。否定するつもりもありません。ただ、それは、単なる受験勉強であり、勉強のすべてではありませんよね。むしろ、大人社会に進む過程の一つに過ぎません。その先には、大学受験や就職試験、また、それぞれの職場で自分の能力を高めていくためにも常に勉強は必要です。1年後、5年後、10年後と皆さんの将来、いわゆるキャリアをデザインし、各段階における目標を達成するためにも、学び続けることが大切だと思っています。

話はそれますが、皆さんは「社会人基礎力」という言葉を聞いたことがありますか。「社会人基礎力」とは、経済産業省が提唱したことばで、3つの能力と12の要素から構成されています。簡単に説明しますと、一つ目は「前に踏み出す力(アクション)」です。失敗しても粘り強く取り組む力を指します。具体的には、常に言い続けている主体性の他に、実行力、働きかけ力が挙げられます。指示待ちにならず、自分で物事を捉え、自ら実行できるようになることが求められています。二つ目は「考え抜く力(シンキング)」です。疑問をもち、考え抜く力を指します。課題発見力、計画力、新しい価値を生み出す創造力が挙げられます。三つ目は「チームで働く力(チームワーク)」です。多様な人々と目標に向けて協力する力を指します。自分の意見をわかりやすく伝える発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規則性、ストレスコントロール力が挙げられます。グループ内の協調性だけに留まらず、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められています。このように「社会人基礎力」とは、言い換えれば、企業が求める人材像のことなんです。

勉強は志望校に合格すればそれで終わりではありません。志望校合格は、皆さんの夢実現の第一歩に過ぎないということです。昨年、3学期の始業式で、2、3年生の皆さんに「ウエルビーイング」についてお話をしました。このウエルビーイングとは、「すべてが満たされた状態かつ継続性のある幸福」を意味します。それは、「夢が実現された状態」とも言えます。ただ、私たち人間は自分の夢や希望が叶うと、すぐにまた、新たな夢や希望を抱いてしまいます。ですから、先ほどお話しした「社会人基礎力」の12の能力要素を少しでも多く身に付けられるように、また、生徒会のスローガンである「SIN化~新しい一歩を踏み出そう~」のように、少しずつ進化していく必要があります。私たち先生は、今でも少しずつ進化しています。少々息苦しく感じるかも知れませんが、それが生きている証だと校長先生は思います。

3年生の中には、すでに、進学を確定している生徒もいます。また、合格できるか不安になって、志望校を変更しようと悩んでいる生徒がいるかも知れません。校長先生はそれでも構わないと思います。受験生とは言え、まだ15歳です。これからの長い人生のことを考えると迷いが出て当然です。いろいろなことを悩みながらじっくり考え、一つずつ、納得しつつ、解決しながら乗り越えて、純粋な気持ちで、挑戦しようとするのが受験生です。そういう3年生に対して、1、2年生は、邪念なく、濁りなく、応援してあげることがとても大切だと思います。そして、そういう3年生の背中を見て学び、次に続いていってください。来年は2年生の番です。全ての3年生の進路決定が上手くいくことを願っています。今年も進化し続け、生きているという実感を味わうことのできる高千穂中学校を一緒に創っていきましょう。

【校長室】慎独

昨年2学期の終業式のあいさつで「これからのあっという間の1年間を来年末に振り返ったとき、『幸せだった』『楽しい1年間だった』と言えるように」と話をしました。2,3年生はおそらく覚えていてくれていると思いますが。皆さんは、この1年間をもう振り返ってみましたか。

今日は、明日から冬休みを迎えるにあたり、「慎独」という言葉についてお話をします。漢字は「慎む」という文字に孤独の「独」と書きます。

現在、日本各地では様々な災害や事故による死亡事故、闇バイトの誘惑など、危険なことがたくさん発生しています。先週水曜日は、保護者迎えによる一斉下校を行いました。急なお願いにもかかわらず、保護者の方々のご理解とご協力を得ることができ、何事もなく全生徒の下校を完了することができました。保護者の方々にも「ありがとうございました」と伝えていただければと思います。

今年の冬休みは13日です。保護者の方々もお仕事等で常に皆さんと一緒にいるわけではありません。その間、皆さんは、自分で考え、判断し、行動しなくてはいけないという、一人の時間が増えるということです。そういう、人が見ていないところでは、たとえよくないこととわかっていても、ついやってしまう時があるかも知れません。人間誰しも起こりうることです。それは、校長先生のような大人にだって言えることです。

先ほど、各代表のみなさんが2学期を振り返ってくれました。

1年生は、学年の反省として、時間を意識して行動することと忘れ物の多さを課題として取り上げ、その解決のために、時間を意識して、計画的に行動することを

2年生は、学級委員長として自分が模範的な生徒になるということや様々な行事を通して、達成感や充実感を味わうとともに団結することの難しさを改めて感じたことを

3年生は、受験勉強に向けて、自分の弱点を見つめ、先生方からアドバイスをいただき、限られた時間の中で効率よく勉強していきたいと

そして、生徒会からは、自分の思いを人に伝えることの難しさや次のステップに進む上での準備をしましょうという話がありました。

代表の皆さんが、2学期の反省をもとに3学期の抱負を語ってくれましたが、皆さん一人一人が心身共に健康で安心安全な生活を送ることができて、初めて新たなスタートをきることができるのです。自然災害に遭遇した際は、「想定外を想定する」。これはずいぶん浸透してきたと思いますので、冬休みのように一人になることが多い長期休業中も気を付けていきましょう。

冒頭で話した「慎独」とは、いかなる状況でも自分を律することができるかを問うことばです。儒教の思想を記した「大学」という古典に書かれている「君子は必ずその独りを慎むなり」から来ています。意味は「自分一人の時でも行動を慎み、道を外れないようにする」ということです。人が見ていなくても、見られているときと同じような行動をとることが大切です。人が見ていないということは、自分しか知らないということ。少しぐらいならいいではなく、「慎独」のとおり、自分一人の時間でも行動を慎み、人としての道を全うするよう心掛けてください。これは、みなさんの健康や安全のためにもぜひ実践してほしいと思います。最終的に、皆さんが何事もなく、無事であることが、校長先生の一番の願いであります。

みなさんが令和7年も日々充実した楽しい生活が送られることを願いながら、令和6年というこの幕を閉じたいと思います。

みなさん、よいお年をお迎えください。

令和6年12月24日  校長 金 丸 智 弘

【校長室】メリークリスマス

18日(木)の朝、担任の先生と一緒に一人の生徒が、校長室を訪ねてきた。調理実習で作ったおやつを持ってきてくれたのだ。今回で2回目。前回のポテトチップスは、塩味がしっかりきいてて、私の好みの味だった。今回はポテトチップスと芋天である。生まれ故郷の都城では「ガネ」というが、好物の一つである。感謝を述べつつ、話を聞くと

① 小麦粉を付けすぎないように注意した。

② 校長先生の体を気遣って、塩味をおさえた。

③ 油がはねないように、優しく揚げた。

とのことである。

確かに、塩味は薄めであったが、それ以上に、生徒の健気な心遣いに心を奪われてしまった。一足先にいただいた最高のクリスマスプレゼント。H君、ありがとう。