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高鍋高校で普通科CI(キャリア情報)クラス1年生向けに「対話でぶつける日」が開催されました

9月22日、宮崎県立高鍋高等学校(以下、高鍋高校)で、児湯地域を中心に様々な進路実現を果たした14名の方に講師としてお越しいただき、普通科CI(キャリア情報)クラス1年生 2クラス(43名)との「対話でぶつける日」が開催されました。

 最初は会場に緊張感が漂っていましたが、対話を重ねる毎に生徒たちが活発にメモしたり質問する姿が見られ、会場全体の気温が上がったと感じられるほどに。実施後の生徒アンケートでは「25分の対話の時間があっという間だった」「もっと話したかった」との声が多く上がりました。

<生き生きとした表情溢れる生徒たちと、会場の外で撮影(左下の紹介ボードは誰のものでしょう?)>

 

「ひなた場」や「哲学対話」等、対話型プログラムのパッケージはすでに存在しますが、一貫してこだわってきた「対話でぶつける日」が、どのような背景で企画・準備されてきたのかに特にフォーカスを当て、報告します。


【背景】

 今年5月、高鍋高校の普通科CI(キャリア情報)クラス1年生のうち1クラスを担任している先生より「対話でぶつける日」の打診をいただきました。

上にも記載したとおり、「ひなた場」や「哲学対話」等、対話型プログラムはすでに存在します。そうした既存のプログラムを使った方が取り組みやすく、主な流れが決まっているため前後の見通しが立てやすいという意味で安心感もあります。対話にご協力いただく地域の講師14名の皆様をはじめ、関わってくださる方に向けての丁寧な説明や、生徒向けの準備、そのためのスケジュール確保も予想されましたが、それでもやるという熱意に、コーディネーターも覚悟をきめたのでした。


 対象となっている高鍋高校普通科CI(キャリア情報)クラスは、大学進学のみならず、専門学校進学、就職(公務員・民間就職)など多種多様な進路実現を目指す生徒が在籍しています。 その中で特に1年生は進路研究の初期にあたり、ぼんやりと夢を描いている生徒やまだ夢が見つかっていない生徒もいます。高校生活の早い段階から、目標やビジョンを持つことは将来に向けて具体的な行動を決める助けになります。こうした生徒たちの背景を考え、進路実現に向けて高校3年間のビジョンを描くことを目的として企画されました。


 この企画のコアビジョン

  • 進路研究を通じて自分を見つめる・見つめ直す
  • 対話を通して自分の強み・良さを見つける
  • 社会に参画する態度を育む
  • 地域の人と対話を通して地域の良さに気づく

 

【事前準備】

企画を実施するにあたって事前準備として実行したことは、大きく2つあります。


①講師向け

 1つ目は、開催背景やコアビジョンを含めこの企画の趣旨を講師の皆様に賛同いただいた上で、「キャッチコピー」や講師を表す「5つのキーワード」を事前にいただくことです。

講師の方々とはできる限り直接お会いして、お一人お一人に企画の主旨を説明し、ご協力をお願いしました。直接お会いできない県外の方にはオンラインで説明する時間をいただきました。

また、生徒たちと講師の方々をつなげるための工夫として、講師の方々には事前にキャッチコピーとご自身を表すキーワードをGoogleフォームに入力いただき、それを元に対話グループのマッチングを行いました。

<Googleフォームを使って、講師の方々にキャッチコピーとキーワードを入力いただきました>

 

②生徒向け

 2つ目は、生徒による自己の棚卸しです。

6月、人生グラフを基に自分の無形資産を考える時間をとり、過去の出来事の棚卸しを行いました。7月は職業ガイダンスに参加し、様々な職業に触れる機会を持ちました。また、得手不得手に関係なく対話にチャレンジできるよう、自己紹介ボードを作成し、当日も見ながら話せるようにしました。

<自己紹介ボードを使って、自分のことを講師やグループメンバーに紹介>

 

<企画立案から開催日までの大まかな流れ> ※Co:宮崎県キャリア教育支援センターコーディネーター

 

【開催日当日】

普通科CIクラス1年生2名による進行で、和やかに進みました。

 

<当日の進行・タイムスケジュール>

 

 山尾校長先生のあいさつからスタート。このような機会が生徒たちにとってはチャレンジであるかもしれない点について触れ、「ぜひ、引き出していただけないでしょうか」と講師の皆様へのお願いとしてお話しされました。

  対話の前には、バラの生産者兼フローリストとして花の魅力を発信する児玉 光世(こだま こうせい)様に、「働くこと」をテーマにした全体講話を行っていただきました。

働くというテーマと個人の幸せを結び付けて生徒たちに語りかけてくださり、対話に向けて生徒たちの期待が高まるのを感じました。


いざ対話へ・・・! の前に、企画者である井上先生(情報科)から「どんどん思いをぶつけましょう!」と熱いエールが生徒の皆さんへ送られました。まさに企画タイトルにもなっている「対話でぶつける日」らしい一幕。

いよいよ生徒は第一回目の講師の元へ。ご講演いただいた児玉様や、高鍋高校OB・OG、地域企業の皆様が生徒と向き合い、お話をしてくださいました。生徒たちはそれぞれに、計3名の講師との対話を通して色々感じていたようです。

 

生徒からの声を一部紹介します。

【振り返り】今回の企画全体を通して気づいたことや変化があったこと、これからに向けてについてまとめてください。


・今回の企画は実施していただいてとてもいい経験になったと思います。進路が何も決まっていない自分でも自分ならこういうことはできるんじゃないかとかたくさんの夢や希望を与えてくださいました。今からでもたくさん勉強して将来の選択肢を広げていきたいです。


・対話でぶつける日を通して新しいものの見方や考え方を知ることができたと思います。たった3人の方と対話をしただけで変わるものなんだなと思いました。ほんとは全員と対話したかったです。またやりたいなと思いました。


・まず、幸せになるために、何をすればいいのかを考えたときに、やっぱり、自分のことを知ることが大事だなと思いました。また、私は海外に行くことに対して、怖いイメージがありましたが、対話を通して、海外の経験も大事だと気付きました。


・それぞれいろいろな職業をやっていらっしゃる方々に話を聞けて、本当によかったなと思いました。最初は、何しゃべろうかすごく緊張していたけど、自分の将来の夢などいろんなことを話すうちに結構スムーズに会話ができるようになってとても楽しかったです。自分の世界がめっちゃ広くなったし、すごくワクワクしたし、これから先いろんな生き方ができるんだなと思いました。対話した方々にいろいろなアドバイスをもらったのでこれからは、そのことを生かしたり、考えたりしながら自分の進路についてよく考えていこうと思いました。それから、質問を考えるのが難しいなと思いました。

また、講師の方々からの実施後アンケートを見ると、この企画に興味を持ってくださっただけではなく「地域貢献」「高校生のリアルへの関心」「依頼主の熱量に心を動かされた」ことも、ご協力いただけた理由の一つになっていたことが分かりました。

 

学校では講師の方に時間を割いていただくことへの申し訳なさが根底にあるようで、依頼文書1枚お渡ししただけで当日を迎えてしまうこともあると学校現場から伺います。一方、講師より「会社にわざわざ足を運んで説明をしに来られたことに熱意を感じた」というコメントもいただきました。

言葉で書くのは簡単ですが、持続的な関係性を目指すためには、地域と学校が遠慮しながらでは限界があるのかもしれません。「WHAT」「HOW」の前に「WHY」も含めた思いのレベルで対話を促していくことも、コーディネーターに求められる役割かもしれないと感じました。改めて、ご協力してくださった皆様に感謝申し上げます。

 

【実施後1ヶ月経過】

R5年度第一号センター通信掲載の機会をいただきましたので、ご担当の井上先生にコメントをいただく流れで、振り返りと今後についてお伺いしました。インタビュー形式でお届けします。(右:高鍋高校・井上先生)

 

(コーディネーター 福島)